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電車通学って、なんでこんなにめんどくさいんだろ。
そんなことを考えて途方に暮れながら、私はぎゅうぎゅうの満員電車に乗り込んだ。
1から4時間目までしっかり授業を受けた後、オーディション会場まで駆け込むって言うのが、
だんだんルーティンになっている1日だ。疲れるに決まってる。
「Aちゃん、芸能人なの?」……いや、芸能人では…。
まだまだ芸能人なんて呼べない。ただの知名度低いユーチューバーみたいな、そんなん。
この間初めてCMに出させていただいたのに、
結局わたし、納得のいく演技できなかったし。
ま、セリフとかない。笑うだけなんですけど。
自傷気味に笑うと、お尻に違和感を感じる。
「…?」
すぐに離れた感触に、満員電車だしなあっと小さくうなずいた。
でもまた、お尻の辺りを触られるような感触。
…いやでも。気にしすぎかもしれないから。
そんなこと思ってたら、とうとうスカートが捲られそうになる。
…駄目だ、わたし。
誰か。
助けて、なんて小さな吐息を漏らせば、わたしのお尻の違和感がふっと消えた。
「!」
振り返ると、黒髪の綺麗な顔の男性がニコニコしながらジジイの手を握っている。
『おっさん、痴漢したよね。俺と一緒に次の駅で降りよ。』
そう言って微笑む彼。
『俺は別にっ、痴漢なんか!』
手を振りほどこうとするジジイに、彼はため息をついた。
『この子のお尻触ってたでしょ?可愛い子だけど、それは駄目だよ。』
『俺はしてないっ』
ほら、言えって。
彼の優しい目に、私は俯いていた瞳を上に上げた。
「……触られました。わたし、この人に触られました。」
よく言えました、と言うように弾ける笑顔を浮かべた彼は
瞬く間に駅に着くと、さっさと手を引いて歩いていく。
『こいつ突き出しとくし。怖いだろうけど、こっから1人で帰れる?』
「わたし、着いていきます」
『だーめ。可愛すぎるからまた痴漢される前に早く帰りな?』
そう言って撫でられる。
赤くなったわたしの顔を見て、おでこに口づけしてから去る彼に、わたしはもっと惚れ込む。
ーーーーーーー
ああ、思い出した。
………わたしの、初恋だ。
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あおりんご(プロフ) - この作品を読ませて頂くまで、自担の面白い占ツクがほんっっとに無くて、干からびそうでした!!もう久しぶりにキュンキュン出来そうで更新楽しみにしています!頑張ってください! (2020年1月28日 23時) (レス) id: d5daa823b4 (このIDを非表示/違反報告)
つくも(プロフ) - うわぁぁぁあい(≧∇≦)新作ダァァァ! 楽しみにしてるね!! あと…わがままで悪いんだけど、あの何だっけどえすな社長…的な樹のやつそろそろ見たいなー(・ω・`) なんて思ってますよ… (2020年1月26日 0時) (レス) id: 5e13d040b5 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりんちょ。(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!次の更新も待ってます! (2020年1月25日 11時) (レス) id: 386d70d567 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽむりんこむ | 作成日時:2020年1月24日 19時