ワケあり少女3 (ページ9)

今日:6 hit、昨日:4 hit、合計:25,718 hit

第九話ページ9

あれから。
特になんの話もしないで時間が過ぎて。

私も何も言えなくなった。
本当、泣きたくなるわね。
身勝手な人ばかり。
大人になれない大人ばかり。

私たちは、道具じゃないのよ。

そんなとき。

ピーンポーン。

『っ、』

ヤバい。
この時間のチャイムは。

あの箱が来る合図。

いつもならば一人でなんとかする。
でも、今は岬さんがいる。
どうしようか。
隠して持って行く？
仕事関係だと言えば平気かもしれない。

誤魔化すセリフを考えながら玄関へと進む。
草薙さんは、きっともうすでに危険ではないことを確認済みで。
宅配の人と一緒に来てくれているんだろう。

ガチャ。

『草薙さん、いつもすみません。』

本当に申し訳ない。
こんな。
あいつなんかのせいで、草薙さんに苦労をかけてるなんて。

「いえいえ。仕事ですからね。それに。」

A様にお会いできる回数が増えて嬉しいですから。

優しく笑って言う草薙さんに心が熱くなった。
本当に。
この人に出会えてよかった。

『ありがとうございました。』

ガチャんっ。

小さなダンボール。
入っているものはいつも同じ。
たくさんの写真とラブレター。
ラブレターなんて可愛いものじゃないけれど。

「Aちゃん？」
『っ、なんですかっ？』

咄嗟にダンボールを隠すような動作をしてしまう。
しまった。
そう思った時にはもうすでに時遅し。

「なに？それ。」

とてもじゃないけど普通じゃない笑みで問いかけられる。

『なんでもないわ。仕事のものよ。』

そう言って、部屋にダンボールを持って入る。
その後ろをついてくる岬さん。

『なんなんですか。』

そう聞いても。

「ん？気にしないで？」

にっこり笑って返される。
ついついため息をついて、私はダンボールを置いた。