【文スト】訳ありコンビニ店員

ビタミン ページ10

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『今、其の顔になる理由を聞いても？』

「云ったじゃあないか、君が可愛いからだよ」

『た、例えば？』



嗚呼、嫌な予感

其れと共に抜けていく力



＿＿＿＿＿此の男は




「私を心配して顔を歪め、声を荒げる君と
　私の口づけに成す術無く応える君でしょ？

　其れから、死を前にして綺麗な涙を流す君

　＿＿＿＿＿どの君にも実に興奮したよっ」



此処まで、身振り手振りで
其の興奮とやらを力説する彼に


完全に脱力した



分かるだろうか、要は嵌められたのだ


先刻の錠剤は大方ビタミン剤か何かだろう


死を前にして、冷静さが欠落していたが
改めて思い返してみると微かに酸味があった




＿＿＿＿＿やられた




大きな溜め息が出る


『太宰さん、貴方って人は、』

「うん？」



まるで悪気のない其の顔と声色に
最早清々しさを感じる私は甘いだろうか



『心中をしたい人が如何して
　興奮目的でこんなことを？』

「其れには幾分語弊が有るねぇ
　流石に興奮目的じゃあないよ」

『じゃあ、如何して？』

「唯、いつも飄々とするAを
　崩したかった、其れだけだよ」

『そ、そんな事で......』



予測不能も甚だしい

本当に敵わない



「心中も良いけど、私の行動一つに
　一喜一憂するAも中々良いねぇ」

『其れこそ語弊が有ります』



私がいつ一喜一憂したって云うんだ
有ったのは焦りと呆れのみである




『ところで如何して私の家を？』


まあこんな事、其の職の彼に聞く迄も無いが



「探偵社員を舐めたらいけないよ、其れと
　此の近くに私の住む社員寮が有るのだよ」


因みによく見かけていた、と



其れは初耳である




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