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ふとAの横を見やると、革製の高級そうな大きめの四角いバッグが置かれていた。
そこからバッグには不釣り合いであろう手書き数字が記入された紙の束。
「何だそれ」
『……ん?、これのこと?』
Aがバッグから引っ張り出し、オレに差し出したのは計算プリントだった。
だがその内容は五歳ぐらいのAにはかなり高難易度、いや意味を理解することすら出来そうにない小六でやる算数の問題。
その手書きの数式も達筆な人が書いたように綺麗で整っているため、とても幼い彼女がやったものには見えない。
「……これは?」
『私のお勉強。やらないと怒られるの。気分転換に内緒で外でやろうとしてここでやってたら雨が降ってきてしまって』
「お前が書いた、いや解いたのか?」
『うん。……ねぇ、お兄さん質問ばかり。私、お兄さんの名前も聞いてないのに』
渡されたプリントを眺めていた視線を上に上げると拗ねたように頬を膨らますAがいた。
その年相応な雰囲気にやっと警戒が解ける。
なんだ、やっぱただのガキか。
「悪りぃ。オレは今牛若狭」
『……わか?ワカくん?素敵な名前!!』
「そうか?お前の名前は可愛いな」
『……ほ、本当に?そんなこと言われたの初めて!!私の名前、可愛い?嘘じゃない?』
「ン、可愛い。A」
名前を呼んでやると蕩けるような笑みを浮かべて、心底嬉しそうに地についていない足を揺らす。
『ん、ふふふ』
「あー、そうだ。ココ間違ってんぞ」
『え!?』
プリントを人差し指で叩き、示すとAは焦ったような表情をして慌ててオレの持つプリントを前のめりに覗き込んだ。
ころころと表情が変わり、見ていてあきない。
「ペン持ってるか?」
『う、うん』
Aが使い古され、短くなった鉛筆をバッグの中のペンケースから出す。
それを横からかっさらい、サラサラと問題の式を書いてからAにそれらを返した。
「コレはこうすんだよ」
『す、すごい!!ワカくん天才なの?』
「天才ってか、オレぐらいの年になるとそれはもう習ってるから分かるだけ」
『そう、なの?』
「……でもお前がやるには7年ぐらい早い」
『そう、なんだ?』
何が何だか分かってない、という顔のAが可愛くて頭を撫でてやる。
気持ち良さそうに目を細めるAに、自然とオレの口角は上がっていった。
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セニオリス - きなこだいふくさん» 頑張ります!!ハッピーエンドにはならないと思いますが、最後までお付き合いしていただけると嬉しいです。 (2021年11月20日 15時) (
レス) id: cd823a214f (このIDを非表示/違反報告)
きなこだいふく - ヤバい、めっちゃ好きなタイプの作品だ......てっきりワカがヤンデレなんか？って思ってたけど夢主だった。重い純愛（？）大好きです！これからも更新頑張ってください！ (2021年11月20日 11時) (レス) @page9 id: df29fd2470 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：セニオリス | 作成日時：2021年11月15日 22時
