【十二ページ目】拝啓 牛島若利様へ 【牛島若利】

九行目 ページ9

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「二つとも出来たらよかったね。でもそれはすごく難しいことで、それを出来る人なんてきっとこの世に一握りしかいないよ」
「ゔ、ん」
「二つとも疎かになるのは嫌だから、って断れたのは本当にえらいと思うよ。マネージャーもやりたかったよね。牛島を選んだにしても、Aはバレー部を支えたくなかったわけじゃないんだから」
今日の私は、部外者だ。バレー部と歩んだ思い出、思い出なのか？バレーに関する思い出、思い出だけど、バレー部と歩んだものはない。私は部に所属していないから。
「自惚れてるわけじゃないのはわかってるよ。誰のせいじゃないもん」
いいのかな、こんなに個人的で。浅ましくすら感じる。都合がいいかな、いいのかな。

目の奥が、つんと痛く、そして熱く眼を揺らした。まばたきをするたび、眼球に貼られた涙の膜が粒になって落ちた。細かく息を吸った分、浅くしか息を吸えなくて、苦しい。
今日のこの涙は、いったいどんな正当な理由で流れているんだろう？

「わ、たし。ぶがい、しゃ…」
「あたしもだし、周りにいる奴らも全員部外者だよ。あそこで号泣してる女もそう」
「ひ、い゛…なんでだろ、」
「Aは部外者だと思ってるかもしれないけど、あいつらはAのことそんなふうに思ってないよ」
「くやし、い。ゔ、ぐ。…ずずっ」
「そうだね。あたしも悔しいよ。わかるよ」
「ぜっだい、まけ…だりっ、しない゛っで思っでだ…」
「みんなもそう思ってたよ。たとえ部外者でも、そうじゃなくても。ここに来てる人は、誰もウチが負けるだなんて思って来てない」
「わ゛たしっ、」
「うん」
「いつだって、憧れてたの」
「知ってるよ。わかってる」


「ずっと、あこが、れっ、てた…の…」
白鳥沢が勝つ試合を見るたび、彼らのいるコートは光で照らされているように見えていた。対照的に、負けたチームを見ると影が差し込んだように見えて、時間が止まって見えた。ああ、今日は逆の立場だ。

若利くんの出る試合を見るたび、わたしもつよくなれたような気がした。ちがうけど。あのひとのことが大好きだから、わたしもがんばろうって思えた。実際、頑張ってきた。この鉛筆だこは嘘をついていない。私はこれまで、数学の分野において、誰かに一位を譲ったことは一度もなかった。他の教科も誰かに負けないように頑張った。わたしは、そうやって強くなってきた。

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