四十八行目 ページ48
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「じゃあ今日は浴びたい気分だったんだね」
そう言うと、若利くんは乗っけていた頭をパッと持ち上げて、またも私をじいっと見つめた。びっくりして頭が後ろへちょっと下がると、その分若利くんも顔を近づけてくる。
「何、何？」
「わからないのか」
「言ってくれないとわからない…」
私の消え入るような声を拾うと、若利くんは頭をぽりぽりとかいた。それと同時にどことなく、頬が少し夕焼けと同じような色になる。眉間にしわを寄せて、たとえ私を睨むように見ていても、若利くんはやっぱり可愛かった。
「一緒に写真を撮りたかった、からだ」
ひぇ…と喉から出た音が空気の中に消える。まさかそのためにシャワー浴びたの？そのために写真の列切り上げてきてくれたの？それだけのために？私のために？ポンポンと浮かんでくる考えは全然消えてはくれない。そればっかりが埋め尽くしていくもんだから若利くんに応えてあげられなかった。それに耐えられなくなったのか、彼が「だめか」なんてぽつりと呟いた。
「だめじゃない！！！全然だめじゃない！！一緒に撮ってくれるのすごく嬉しい！ありがとう！」
慌てて制服のポケットからスマホを取り出した。手が震えて仕方なかったけどなんとかカメラアプリを起動して、懸命に上へと手を伸ばした。
「別にね、シャワーなんてわざわざ浴びなくていいのに、私もシーブリーズしかしてないし…」
「お前とは根本的に汗の量が違う」
「それはそうだけど…はいじゃあ若利くんニコニコしてください」
思い出がカメラに映る。
若利くんと写真を撮るのは最後じゃない…と思いたいけど、高校の体育祭は最後だ。最後、という言葉はやっぱり悲しいなあ。みんなこんな風に胸が苦しいんだろう。
「これが最後じゃない」
若利くんが不意に呟いた。
「だから笑え、A」
その肯定に、私はどれだけ縋って生きようか。この一瞬を、細部まで心から愛している。
「そうだね。若利くん」
あなたが作ってくれた美しい思い出が私を支えてくれる。だから大丈夫だって、そう信じています。
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ゆに(プロフ) - あゆむさんの物語の書き方、構成、全部好きです！これからも更新頑張ってください。ずーっと応援しています！！ (2019年1月5日 13時) (
レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - 覚編も合わせ全編読ませていただいています！ (2019年1月5日 13時) (レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
梅星饅頭(プロフ) - ご、ご本が出るんですか！？？これは買わないといけない……ア"ッ分かります需要と供給がまっったく一致していないですよね…つらい！ 今年も一ページ目から一文字一文字若利くんの尊さを感じて新年迎えさせていただきます。お体に気を付けて あゆむさまもよいお年を！ (2018年12月31日 23時) (レス) id: baf07f2d20 (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 本だァ“ァ“ァ“ァ”ァ“ァ”！！！めっちゃ楽しみにしてます！！！！ (2018年12月23日 15時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 本めちゃくちゃ欲しいです！！書籍化になるのを楽しみにしています。 (2018年12月23日 15時) (レス) id: 0e45367a12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あゆむ
| 作成日時：2017年12月28日 20時
