四十六行目 ページ46
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「疲れたなあ」
「それな」
隣でポカリをガブ飲みしているみゆきちゃんは、この後部活での写真撮影、今のクラスの仲良い子との写真撮影、さらにまた違うクラスの仲良い子との写真撮影、SNSで仲良くなった後輩との写真撮影。それに何故だか応援団の子にも呼ばれているらしく、まだまだ仕事が残っているらしい。
私のクラスはみんなアッサリしているせいか、人がもうほとんど残っていない。だからみゆきちゃんはここまで逃げのびてきたのだ。熱気の冷めたクラスのベランダから、まだグラウンドで騒いでいる生徒を見下ろすために。
「後輩がね〜泣いちゃって泣いちゃって。他もみんな泣いてるし」
「みゆきちゃんも泣きそうなのに、どうしたの？」
「え〜どうもこうもないよ。泣いたらここまで気合い入れた化粧崩れるでしょ。辛うじてまだ生き残ってるっていうのに…」
そりゃ寂しいけどさ。と付け足すみゆきちゃんの横顔は、夕焼けに相まって哀愁がそこはかとなく見え隠れしている。
最後の最後で優勝したのは私たちの色だ。最後の年に優勝を勝ち取って、私も満足している。みゆきちゃんのクラスなんかは特に熱気に包まれていて、若利くんなんて女子達に追いかけ回されているらしい。いつかのバレンタインを思い出す。
「Aはいいの？」
「私はもうクラスの子とは写真撮ったし、みゆきちゃんともたんまり撮ったし、満足かなあ」
「あれ。牛島と撮った？」
「あ。忘れてた」
「はあ！？とんなよ」
「でも若利くん追いかけ回されてるじゃん…」
「あんたも追いかけ回しなさいよ」
「やだよー！」
「まあ正妻だもんね。他と一緒のことしてないで余裕を持たなきゃ！」
「違うよ！やめてよ！もう！みゆきちゃんは撮ったの！？」
「当たり前じゃ〜んあたしを誰だと思ってんのよ」
私をからかうように、「けっけっけ」なんておかしな笑い方をするみゆきちゃんはとんでもない美人だ。よかったね瀬見くんね。
「Aはあたしと一緒にいてくれる？」
「うん。当たり前だよ」
「ほんと？やったあ〜」
「突然どうしたの」
「体育祭は最後だけど、Aとは最後じゃないなあって思える」
「え〜何〜！？泣いちゃうからやめてよ！」
私の大事な人と、最後じゃないから、だから涙は出ない。今生の別れじゃないから、だから大丈夫。
「じゃああたし、もうひと頑張りしてくるね」
とたとた、軽い足音が、私からどんどん離れていく。それと対照的な重い足音は、どんどんこちらに近づいてくるみたいだ。
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ゆに(プロフ) - あゆむさんの物語の書き方、構成、全部好きです！これからも更新頑張ってください。ずーっと応援しています！！ (2019年1月5日 13時) (
レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - 覚編も合わせ全編読ませていただいています！ (2019年1月5日 13時) (レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
梅星饅頭(プロフ) - ご、ご本が出るんですか！？？これは買わないといけない……ア"ッ分かります需要と供給がまっったく一致していないですよね…つらい！ 今年も一ページ目から一文字一文字若利くんの尊さを感じて新年迎えさせていただきます。お体に気を付けて あゆむさまもよいお年を！ (2018年12月31日 23時) (レス) id: baf07f2d20 (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 本だァ“ァ“ァ“ァ”ァ“ァ”！！！めっちゃ楽しみにしてます！！！！ (2018年12月23日 15時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 本めちゃくちゃ欲しいです！！書籍化になるのを楽しみにしています。 (2018年12月23日 15時) (レス) id: 0e45367a12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あゆむ
| 作成日時：2017年12月28日 20時
