五行目 ページ5
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「目を逸らすな」
肩を掴まれて自然と上を向いた。そうすると、涙がぶわあっと洪水みたいに流れ出すものだから、なんてみっともないんだろうと思う。頭の中で、誰かの前で泣くのはいつだってみっともないと、そう思っていた。怒られた後泣いて好奇の目に晒されていたあの瞬間が忘れられなくていつだってそう思っていた。
でも天童くんもみゆきちゃんも牛島くんも、泣いてることを茶化したりなんかしないし、刺さるような視線をくれたりすることはない。他の人とは違うなんて分かり切ってるのだから、いい加減変わるべくは私のほうだ。誰かに変わることを望んでばかりいては始まらない。あの人たちはもう私の人生において、今後一切関わりのない人たちなんだから、気にする必要なんてないんだ。
「前にも言った。お前が大事だ。だから言うんだ。言わないと何も伝わらないことを俺に知らしめたのは大葉A、お前だ」
「怯えなくていい。怖がらなくてもいいんだ。お前を好いているやつの方が多いんだぞ、わからないのか。お前を馬鹿にする奴は、もうどこにもいない。だから顔を上げろ、泣くんじゃない」
ひゅう、と口から空気が入り込んでくる。鼻水が垂れそうなのを必死に踏ん張ってくれている鼻と、彼の瞳から逃れられずに涙をぼたぼたこぼす目の代わりだった。
誰にだってある幼い頃の嫌な記憶は忘れることはできない。そんな記憶とは一人だけなら無理に戦うべきではないが、戦わないと一生ついて回ってくる。
いつもどこかで怯えている。裏切られること、誰かに期待すること、私のそばから誰もいなくなってしまうこと。
欲しいものは無償の愛だ。同じ量を返すから、なにも言わずに与えて欲しい。どんな時でも私のそばにあってほしい。離れていても切れない繋がりがほしい。手の届く距離にあるやさしい心。わたしをはなさないで。
「牛島くんは、一緒にいてくれる？」
「今までずっと一緒だったのに、今更どうしてそんなことを訊くんだ」
ぎゅうっと抱きしめられたことにひどく安堵して、そのまま目を瞑る。今からならもう開けなくたっていいと思えるくらいに安心していた。
彼が一体どういう意図で私にそれを言ったのか、私は答えを見つけようとは思わなかった。それが友愛であれなんであれ、私に初めて直接注がれた無償の愛は、とても暖かった。
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ゆに(プロフ) - あゆむさんの物語の書き方、構成、全部好きです！これからも更新頑張ってください。ずーっと応援しています！！ (2019年1月5日 13時) (
レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - 覚編も合わせ全編読ませていただいています！ (2019年1月5日 13時) (レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
梅星饅頭(プロフ) - ご、ご本が出るんですか！？？これは買わないといけない……ア"ッ分かります需要と供給がまっったく一致していないですよね…つらい！ 今年も一ページ目から一文字一文字若利くんの尊さを感じて新年迎えさせていただきます。お体に気を付けて あゆむさまもよいお年を！ (2018年12月31日 23時) (レス) id: baf07f2d20 (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 本だァ“ァ“ァ“ァ”ァ“ァ”！！！めっちゃ楽しみにしてます！！！！ (2018年12月23日 15時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 本めちゃくちゃ欲しいです！！書籍化になるのを楽しみにしています。 (2018年12月23日 15時) (レス) id: 0e45367a12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あゆむ
| 作成日時：2017年12月28日 20時
