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三十五行目 ページ35

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写真って撮ったりしますか?あなたは人に言われるまで撮らない人だから、少し心配です。高校時代の写真は残ってますか?私はずっと大切にしてますよ。スキャンダルの話じゃないですよ。





「お前ほんとちょろいな」
「うるせえ曲にすんぞ」
「その自虐ネタで地でいくの??」

早馬くんと思い出写真を撮ったあと、若利くんに向き直った。一緒に撮りたくて、小さなバッグから取り出したスマホをかざして見せると、彼は嬉しそうに目元を綻ばせてくれた。
「若利くん背が高すぎる、屈んでくれる?」
「わかった」
こんな小さな画面に、同じくらいの高さで収まってるなんて、一昨年の自分は想像すらしなかったろうに。
「ごめんね、私百八十センチ無いから…」
「お前には無くて良いと思うが」
私に身長が百八十センチあって、それで男だったら、同じコートに立ちたいなって、思っていた。ドがつく初心者でも、きっと入部くらいはしてた。でも、今の私は違う。身長は百八十センチもないし、バレー部に入ってるわけじゃない。だから、持てるもので自分を支えて彼と同じ方向を見つめて行かなくちゃならない。
「若利くんネズミのやっていい?可愛いから」
「別に可愛くはないと思うが」
ただ好きだから。それだけで十分なのに、それで良しと出来なかったのは、自分を認めてあげられなかったからだ。でも若利くんが、その固定概念みたいなものを溶かしてくれたから、やっと自分の努力を認めてあげられる。若利くんのためにやってきたことに、誇りを持てる。自分史上最高に頑張っている。だから、今は、

「ううん、私は好きだから、こういうの、可愛くて」

コートの外から、観客席から、テレビの外側から、彼を見守ることなんて誰でもできる。私は彼をどこで見ていたいのか?見れることなら、一番近くがいい。バレーボーラーをずっと羨んで、妬んでいたから、せめて同じ地面の上がいい。同じところで同じように立つために。

「うれしいなあ」

今だけは

「似合ってて可愛いな」
「じっ……実物は!?」
「実物のことも可愛いと思っている」
「やったー!」





あなたって写真の中だと、ぼけっと笑ってて可愛いですね。私の隣に写っている物の話なんですけど、悪口じゃないんですよ。可愛いなって話だから。

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ゆに(プロフ) - あゆむさんの物語の書き方、構成、全部好きです!これからも更新頑張ってください。ずーっと応援しています!! (2019年1月5日 13時) (レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - 覚編も合わせ全編読ませていただいています! (2019年1月5日 13時) (レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
梅星饅頭(プロフ) - ご、ご本が出るんですか!??これは買わないといけない……ア"ッ分かります需要と供給がまっったく一致していないですよね…つらい! 今年も一ページ目から一文字一文字若利くんの尊さを感じて新年迎えさせていただきます。お体に気を付けて あゆむさまもよいお年を! (2018年12月31日 23時) (レス) id: baf07f2d20 (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 本だァ“ァ“ァ“ァ”ァ“ァ”!!!めっちゃ楽しみにしてます!!!! (2018年12月23日 15時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 本めちゃくちゃ欲しいです!!書籍化になるのを楽しみにしています。 (2018年12月23日 15時) (レス) id: 0e45367a12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あゆむ | 作成日時:2017年12月28日 20時

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