四行目 ページ4
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誰かが私のことを見ていてくれたり知ってくれたり知ろうとしたりしてくれるのは純粋に嬉しい。付き合いがちょっと簡単になる。安心できる。
これは自分史上最高の賭けで、大一番だった。彼の答えによって私の運命が変わるような気もした。牛島くんは、「そうだな」と表情一つ変えずに言葉を紡いだ。凪いだ風がちょっぴり暖かくて、言葉が掻き消されないように耳を澄ました。
「まず、お前は器量がいい。だがすぐに手一杯になる。でも投げ出すことはせずにやり遂げる。だからよく無理をする。それでいて意地を張ることもあって、負けることは嫌いで、か弱くはないが、弱いところがある」
「……」
「独りよがりなところがある。強がりで、あと自惚れることが嫌いだ。すぐに謙遜する。それはやめろ。…普段は大人しいがたまに活発だ。けれどすぐに落ち込む。それと、褒められるとすごく嬉しそうな顔をする」
「…もういいよ」
少しの沈黙の間に沢山のことを考えた。牛島くんのこと、牛島くんのこと、それと牛島くんのこと。誰かに教えてもらったの？って訊きたくなるくらい、彼は、自分自身が嫌でたまらないところも、少し誇れるところも、知ってくれている。
自分自身がよくわからなくても他人に指摘されれば少しは見えてきた気がして、鼻をすすった。上を向いたら牛島くんにばれちゃうから下を向くしかない。下を向くと重力に逆らえない涙がぼたぼた落ちてくる。
「俺は、お前が昔、何に苛まれていたのかは知らない」
沈黙を破ったのは牛島くんだ。頭の上から降ってくる声は私を撫でるみたいに優しい。すごく好きな声だった。
「だが、今のお前は知ってる。お前が重要視するべきなのは、過去じゃなく今なんじゃないのか」
「お前が考えて、悩んで、目を向くべきは、今だ。過ぎたことは、終わったことはどうだっていいんだ」
牛島くんは後ろを振り向かない人だ。後ろをっていうのはもちろん比喩だ。彼はちょっと天然だけれど。
試合に負けた時、彼は全然悔しそうな顔をしない。むしろスッキリしている。でも、負けることに慣れなんかしない。本当は、はらわたが煮えくりかえるくらい悔しくてたまらないはずだ。チームのことだってちゃんと大事に考えてるんだ。エースだから、誇りを持っている人だから。
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ゆに(プロフ) - あゆむさんの物語の書き方、構成、全部好きです！これからも更新頑張ってください。ずーっと応援しています！！ (2019年1月5日 13時) (
レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - 覚編も合わせ全編読ませていただいています！ (2019年1月5日 13時) (レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
梅星饅頭(プロフ) - ご、ご本が出るんですか！？？これは買わないといけない……ア"ッ分かります需要と供給がまっったく一致していないですよね…つらい！ 今年も一ページ目から一文字一文字若利くんの尊さを感じて新年迎えさせていただきます。お体に気を付けて あゆむさまもよいお年を！ (2018年12月31日 23時) (レス) id: baf07f2d20 (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 本だァ“ァ“ァ“ァ”ァ“ァ”！！！めっちゃ楽しみにしてます！！！！ (2018年12月23日 15時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 本めちゃくちゃ欲しいです！！書籍化になるのを楽しみにしています。 (2018年12月23日 15時) (レス) id: 0e45367a12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あゆむ
| 作成日時：2017年12月28日 20時
