十九行目 ページ19
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「わかっている」
「そんなにAちゃんにひっついてたいなら今度にしなよ!」
「ひっつきたい…わけ…じゃない…」
そろそろと私から離れて行った若利くんの背筋が伸びた。「よっしゃ、俺と交代ね」と天童くんに言われるとやけにあっさりと席を立った彼に妙な名残惜しさを感じつつも、隣に座ってくれた天童くんに「先生、調子はいかがですか」と話を振ってみる。
「Aちゃん先生に先生だなんて言われるレベルじゃないですよ〜」
「じゃあ今日はよろしく頼みますね」
「ご随意にどうぞ!」
天童くんは普段人に勉強を教えたがらないくせにこういう時は張り切ってくれる。素直じゃないのかなとは思うけど彼らしくないから、その辺は曖昧だ。川西くんがほっと息をついた束の間に、天童くんは「ここ違うよ」と瞬時に問題を指摘する。
若利くんてまさか私のことなんとも思ってないんだろうか…?だからこんなことが…?違う、若利くんは及川くんのような奴じゃない…わかっている…でも気になるなあ。
天然の女ったらしのあなたがスキャンダルの一つも出ないなんて、みんな世のバレーボールファンの奥さま方は浮足立っちゃいますよ。ほんとのところどうなんですか?
「Aは下手くそだ」
「若利くんが上手なだけでしょ」
「はいはいもう一回」
若利くんはこんな行事に縁のなさそうな顔をしているくせにみゆきちゃんにダンスを習えばあっという間にさらさらと踊りを覚えた。圧倒的な運動神経にリズム感。悔しい。それに比べて私はリズム感があまりにもポンコツすぎる。フォークダンスが精一杯のようにも思えた。
「大丈夫。オクラホマミキサーは簡単だから。まじで」
「途中で焦って全部忘れちゃうんだけど」
「お前の記憶力はどこに吹き飛んだんだ?」
「飛んでないよ!」
「こんなんでコロブチカどうすんの〜〜?はい、せーのみーぎ、みーぎ、ひだり!ひだり!」
「わーー!!まってー!!」
どうしたって私のこの絶望的なリズム感では足が一歩出遅れるし、若利くんにですら呆れられていてもう恥ずかしいったらありゃしない。「へただな」なんて言いながら私の前髪を少しすくって上から高みの見物をしている彼に言い返す言葉も見つからないくらいに。
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ゆに(プロフ) - あゆむさんの物語の書き方、構成、全部好きです!これからも更新頑張ってください。ずーっと応援しています!! (2019年1月5日 13時) (レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - 覚編も合わせ全編読ませていただいています! (2019年1月5日 13時) (レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
梅星饅頭(プロフ) - ご、ご本が出るんですか!??これは買わないといけない……ア"ッ分かります需要と供給がまっったく一致していないですよね…つらい! 今年も一ページ目から一文字一文字若利くんの尊さを感じて新年迎えさせていただきます。お体に気を付けて あゆむさまもよいお年を! (2018年12月31日 23時) (レス) id: baf07f2d20 (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 本だァ“ァ“ァ“ァ”ァ“ァ”!!!めっちゃ楽しみにしてます!!!! (2018年12月23日 15時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 本めちゃくちゃ欲しいです!!書籍化になるのを楽しみにしています。 (2018年12月23日 15時) (レス) id: 0e45367a12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あゆむ | 作成日時:2017年12月28日 20時