十二行目 ページ12
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若利くんの両手は流石に大きいな、と感心しつつも彼の右手を無理矢理外して声を掛けた。多分左手の存在は忘れ去られているんだろう。暮れかけの夕日が彼の帰りを急かしているみたいで嫌になる。
「わっ若利くん？」
「すまない」
「…何が？」
「大丈夫だ。俺は帰る。ああ、気にするな、いいな？」
「うん？うん」
ぱっと離れて行った左手が名残惜しくてちょっと寂しかった。でも若利くんは私の頭を数回撫でると踵を返して一言じゃあな、だけ言って足早に帰って行った。「若利くんばいばーい！」と叫ぶとちゃんと手を振り返してくれたからやっぱり好きだなあと思う。若利くんまたね。
それに比べてあなたは全くと言っていいほどスキャンダル出ませんね。ちょっと嬉しかったりします。
「失礼します、牛島さん」
私の教室で声をかけて来たのは後ろに大きい男の子を引き連れた白布くんだった。ほとんど一年ぶりで、私は「久しぶり、覚えてる？」と声をかけようと意を決した。しかし、さらにその後ろに春人がいたので、私が喋ることはなかった。
若利くんとはクラスが違うけれど、最近の若利くんはちょくちょくここにやって来ている。きっとそのせいで白布くん達は手間取ったに違いない。まあ若利くんに教室へ来ないでなんて死んでも言えないけれど。ちなみに今も隣にいて私の横顔を眺めていた。本当に彼は一体何をしに来たんだろうか、目的もなくここにきて、ただ私の顔を眺めるかして帰っていくのだ。
少し前に「若利くんはこの教室に何か用でもあるの？」と尋ねてみたら、「お前に会いに来た。それ以外に理由はない」と即答され心の中では狂喜乱舞した。もうつらい。若利くんてこんなこというの？どうしたの？何があったの？
「牛島さん、こいつらのことなんですが…ほら言えよ」
「すみません、俺と五色が模試の結果が悪くて補修に呼ばれました…」
「ああ、あの今年から導入されたあれか。いつまでだ？」
「若利くん、あれ次の模試で偏差値五十以下が一教科でもあると抜けられないよ」
「…そうか、お前達はどの教科が駄目だったんだ？」
「「数学です…」」
やめて、若利くん私を見ないで！白羽の矢を立てようとしないで！
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ゆに(プロフ) - あゆむさんの物語の書き方、構成、全部好きです！これからも更新頑張ってください。ずーっと応援しています！！ (2019年1月5日 13時) (
レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
ゆに(プロフ) - 覚編も合わせ全編読ませていただいています！ (2019年1月5日 13時) (レス) id: 2609f34306 (このIDを非表示/違反報告)
梅星饅頭(プロフ) - ご、ご本が出るんですか！？？これは買わないといけない……ア"ッ分かります需要と供給がまっったく一致していないですよね…つらい！ 今年も一ページ目から一文字一文字若利くんの尊さを感じて新年迎えさせていただきます。お体に気を付けて あゆむさまもよいお年を！ (2018年12月31日 23時) (レス) id: baf07f2d20 (このIDを非表示/違反報告)
くー(プロフ) - 本だァ“ァ“ァ“ァ”ァ“ァ”！！！めっちゃ楽しみにしてます！！！！ (2018年12月23日 15時) (レス) id: 4b69e817ff (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - 本めちゃくちゃ欲しいです！！書籍化になるのを楽しみにしています。 (2018年12月23日 15時) (レス) id: 0e45367a12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あゆむ
| 作成日時：2017年12月28日 20時
