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三十六行目 ページ36

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「というかみゆきちゃん、早いねえ。私いつもそこまで行くのに十分かかるよ、今五分くらいしか話してないよね」
『えっ!?そうかな!あたし今走ってるからなー!!』
「えっ、じゃあ家で休んでく?お母さん歓迎してるよ。写真見せたら可愛いって褒めてたよ」
『ああほんと!?でもいいよ悪いし!…あっ!?もうすぐつく!?もうすぐつくって!!どっち曲がるの?』
「わあ、早。早すぎない?雪に気をつけてね。今どの辺?」
『えっとー!どこ!?…あー!わかったわかった今マップ上で最後のT字路!よくわかんないなー!』
「たぶんねえ、右」
『おっけー!!!右ね!!』

気のせいだろうか、私がとぼとぼ歩いて十五分そこらかかる距離を、ものの五分で…と思っていたが、彼女に息切れの様子はない。こんなに喋っているのに。まあ、彼女の普段の運動量は計り知れないだろうから、気にする必要もないか。

『A!もうすぐつくからちょっとお母さんと変わってくれない!?』
「ん?どうかした?まあ、わかったわかった変わるって」

「お母さん、みゆきちゃんが変わりたいって」
お母さんに携帯を渡せば、母は嬉しそうに目元を綻ばせた。みゆきちゃんの話をしてからというもの、母は彼女を気に入っているのである。優しい子だって笑ってくれた時は嬉しかったなあ。

「あらま〜、そうなの!」

何を話しているんだろう、物凄く気になりながら、アイフォンのスピーカーからほんの少し漏れる音に耳を傾けていると、それよりも先に、主張するように、ぴんぽん、とあの軽快なリズムがなる。


「誰だろ?徹?ねーちゃん開けてきて」
「みゆきちゃんだよ!」
私は急いでコートを着て、用意していた鞄を手に取った。手袋をして、中がふかふかのブーツを履く。
「えっ、黒川さん!?」
春人の声が一気に高鳴ったのを無視し、私は玄関の扉に手をかけた。

「Aー、みゆきちゃん、今日は」

「はあーい!」


家族全員がぽかんと口を開け、ついでに私もぽかんと空いた口が塞がらない。
私が開けた扉の向こう側、そこに立っているのは、私が話していたみゆきちゃんではない。


「迎えに…行け、ないか…ら、代わりに牛島君がって…」


「迎えに来たぞ、大葉」

鼻を少し赤くして、またほんの少し息切れをしている。紺色のニット帽を被ったかわいらしい彼。わたしのすきなひと。

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ぽもん(プロフ) - 主人公ちゃんがインフルになった出来事の電話のところで思わず泣いてしまいました。作者様の語彙力にも毎回驚いています。続編も読むのが楽しみです。 (2017年10月27日 14時) (レス) id: 28958b8036 (このIDを非表示/違反報告)
あゆむ(プロフ) - 小粒納豆さん» 小粒納豆さーん!!私の世界観…!すごい響きですね…一年という時間が経つのは早いものですね!彼を好きになって良かったなあと切実に思います…私はこれからも文字量産おばけとして頑張ります!ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2017年1月4日 1時) (レス) id: ca84e134e0 (このIDを非表示/違反報告)
あゆむ(プロフ) - モロモロさん» ありがとうございます!何度も読むと味が出る作品でありますように笑 沢山伏線を巡らせたはずなので探してみてください笑 (2017年1月4日 1時) (レス) id: ca84e134e0 (このIDを非表示/違反報告)
あゆむ(プロフ) - セイラさん» はああさぞかし長かったことでしょう…ありがとうございます…!私も書いているとどんどん若利のことが好きになります!私も勉強しなくては、と思います笑 中々上手くいかなくても努力は大切ですよね…!;;更新頑張ります! (2017年1月4日 1時) (レス) id: ca84e134e0 (このIDを非表示/違反報告)
あゆむ(プロフ) - 甘奈さん» 本の生産を考えると赤字すぎて震え上がるので笑 そりゃあ濁しますよ!濁しまくりです!悶々としながら作品を読んでください!笑 ありがとうございます! (2017年1月4日 1時) (レス) id: ca84e134e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あゆむ | 作成日時:2016年11月6日 18時

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