【七ページ目】拝啓 牛島若利様へ【牛島若利】

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牛島くんは踵を返し、自席へと戻って行った。その間に天童くんがやってきて、「Aちゃん元気〜？」と声をかけられた。私は渡したいものがなんなのか気になりすぎて頭がパンクしそうだった。

「すっごい元気！」
「よかった、ポッキー食べる？」
「たべる！」
「はいどーぞ」

ポッキーを食べるのは久しぶりだ。家にお菓子のストックがあるわけではなく、家族の誰かがたまに買ってこない限り誰も自主的に食べようとしない、買いに行くのをめんどくさがって。「天童持ってる？あれ」「もちろんだよ！」「あとあたしにもちょうだい」「可愛げがないから嫌だね」「ころす」

さっきからなんの話をしているんだろうなあと思いつつ、ポッキーをもぐもぐ頬張っていると、「大葉は元気になった？」と大平くんが、「インフル大変だったな〜！」と山形くんがやってきて、山形くんは私の席の周りにあった椅子にどかりと腰を下ろした。

ちなみに天童くんは私の机に腰掛けている。足が長いから少し膝が曲がっていた。みゆきちゃんはにこにこしながら私の隣の席で天童くんから奪い取ったと思われるポッキーを頬張っていた。


「俺はあの日、お前に言っただろう。お前に大丈夫だと言えるようにする、と」

牛島くんが瀬見くんを引き連れて颯爽と現れて、瀬見くんは「じゃっじゃーん」と言いながら、ある物を取り出した。

「なにこれ？…ん？」

まとめられて束になっているレポート用紙が私の目の前に出される。その表紙には、《世界史 政治経済 授業まとめ》と書かれていた。

「えっ、すごい」
「じゃんけんで負けて俺だけ二つなんだよひでーよな！まあ普段お世話になってっからいーけど！」
「英太ね、先生に出るところのヒントとか聞きに言って珍しがられて「俺に良くしてくれる友人が休んでるんです。そいつの成績を落とすわけにいかないんです！」って言ってちょっと泣かれたんだよ」
「なんか恥ずいからやめろ」
「はいA！」
「無視かよ」

みゆきちゃんから手渡されたそれは、《英語 授業まとめ♡(地獄)》と書かれている。地獄ってなにかな、と思ったが受け取る。「大葉のために夜なべした」間髪入れずに山形くんが《生物 授業まとめ》と書かれたレポート用紙の束を渡してくれた。

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