【七ページ目】拝啓 牛島若利様へ【牛島若利】

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「うん…」
『お前なら大丈夫だ。数学は塾で先取りもしているんだろう？』

「…そうだけど、それ以外は危ういし、全然、大丈夫じゃないよ…数学は、一番じゃないとやだよ…」

彼は私の、何を持って大丈夫だと言ってくれるんだろう。少しの沈黙の中で考える。答えは彼しか持っていない。

『俺は、無責任なことは言わない。これまでのお前を見て、大丈夫だと言っているんだ。それと、お前に大丈夫だと言えるようにする』

『お前は今までも、今もこれからも、独りで勉強しているわけじゃない』

確かに、私は独りじゃなかったかもしれない。テストを受けると勉強するは違う。テストを受ける時は独りだ。結果は個々の利益になる。けれど勉強は。
『ねえA、あたし二次関数完全に忘れたわ。もう微塵も思い出せない』
『Aちゃーん、三角関数ってどうすんの？これは何？』
『ユーグリッドの互除法むりだわ！！！！』
『大葉、合同式って模試に出ると思う？』
『大葉ー！！！俺は論理が大嫌いだ！！』
『大葉にわからない問題はあるのか？いや、言い過ぎではないと思うが』

『教えてくれてありがとう』






あの時、あなたが電話で、私に「焦るな」と言ってくれたこと、今でも覚えていて、私の中で格言になるくらいまで、心に残っているんです。あなたはもう覚えていないだろうけれど、私の心の中に、ずっと残っているんです。あなたの言葉は、私に忘れてはいけないことを教えてくれます。






『A！？よかった！インフル大丈夫！？』
『今のインテル入ってる？みたいだったな』
『ハァ〜寒い。寒すぎる。さすが宮城の雪男』
『大葉大丈夫か？ちゃんとあったかくして寝るんだぞ』
『獅音のパパ感はんぱねえ』
『大葉〜早く戻ってこいよみゆきがうるせえから。あいつ相手がいないから俺のとこにくんだよ』
『何その言い方！学校一の美女が寄ってくるのめっちゃありがたくない？』
『Aちゃーん早く戻ってきて寂しいよ』

『あれA？なんで黙ってんの？大丈夫？』
『こいつらが煩いせいか？俺が黙らせるか』
『若利の言い方物騒すぎて身震いしたわ』

「ううん、違うの」

『Aちゃん心なしか声震えてる？大丈夫？』

「…うれしいの、心配してくれてありがとう」

情も懐も深い人たちに囲まれていて、自分はいつか背後から刺されるんじゃないかとか、そういうくだらないことばっか考えてるのは頭の処理が追いつかないからであって、照れ隠しでもあるからだ。

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