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二十一行目 ページ21

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私ができるのは、いつだってこれだけだから、私はこれを武器として磨くしかないのだ。彼の圧倒的な強さの前で、対等にだなんて張り合えないから、少しは無理をしないと駄目だ。知識は力なり、ってどこかの偉人も言っていたように。

「お手洗いいってくる…」
「ついてく?大丈夫?」
「うん、なんとか」

気持ち悪いがピークを迎えつつあるために、私は大雑把に椅子を引いて席を立った。兎に角お手洗いに行かないとという危険警報が頭の中で響き、横文字まで並びそうである。

一人とぼとぼ歩いていると、食堂から帰って来る生徒何人かとすれ違った。その中には牛島くんがいた。目を合わせないように俯きながら歩くと、吐きそうになったがその努力も虚しく、彼に声をかけられた。

「大葉?…顔色が悪いぞ。大丈夫なのか?」
話すと出る、まずい、彼から離れたい。そう思い、無視するわけにはいかないので首をふるふると縦に振った後、脇をすり抜けて女子トイレに向かって真っ直ぐ走った。
途中、彼に「大葉?」と呼ばれたが、それには反応することが出来なかった。

個室に走りこんでは即座に鍵を閉め、顔を便器に向ける。食道のあたりからこみあげるあの気持ち悪い感覚が、喉を伝った。

「お、ぇ、ゔ、ぁ、おえ」
一度、我慢を外すと、胃の中から逆流するあの気持ち悪い感覚と、食道を伝って喉の奥から吐瀉物が顔を出したことがよくわかった。

せっかく食べたお昼ご飯が見るも無残な形で水の中に飲み込まれ、口の中では胃酸の味でいっぱいで、気持ち悪くて舌がうねる。落ちいたのもつかの間、すかさず第二波がやってきてあっけなく外へ出た。

全身の力が抜ける、手が痺れる、吐くという行為は本当に嫌いだ。一気に体力を持っていかれるし、あの吐き気の苦痛は耐えられない。くちがきもちわるい

立てなくなる。みっともない、いやだ。

「Aー、大丈夫?」
みゆきちゃんの声が聞こえた。私を心配してここまで来てくれたのだ。
「たて、ない」
「えっ?どうした?」
「……吐いちゃった」
「ウッソ!?!?!?!やばいやばいやばいまってて!!!!先生!!!!」

どたどたと慌てて駆けていくみゆきちゃんの足音が遠ざかったと思ったら、その足音はまたすぐさま戻ってきた。それも二人分だ。案外すぐに先生が見つかったのだな、と思っていると、「やっぱり大葉は体調が悪いのか」その声は私が知っているような保健室にいる先生とは似ても似つかないような声だった。

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ぽもん(プロフ) - 主人公ちゃんがインフルになった出来事の電話のところで思わず泣いてしまいました。作者様の語彙力にも毎回驚いています。続編も読むのが楽しみです。 (2017年10月27日 14時) (レス) id: 28958b8036 (このIDを非表示/違反報告)
あゆむ(プロフ) - 小粒納豆さん» 小粒納豆さーん!!私の世界観…!すごい響きですね…一年という時間が経つのは早いものですね!彼を好きになって良かったなあと切実に思います…私はこれからも文字量産おばけとして頑張ります!ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2017年1月4日 1時) (レス) id: ca84e134e0 (このIDを非表示/違反報告)
あゆむ(プロフ) - モロモロさん» ありがとうございます!何度も読むと味が出る作品でありますように笑 沢山伏線を巡らせたはずなので探してみてください笑 (2017年1月4日 1時) (レス) id: ca84e134e0 (このIDを非表示/違反報告)
あゆむ(プロフ) - セイラさん» はああさぞかし長かったことでしょう…ありがとうございます…!私も書いているとどんどん若利のことが好きになります!私も勉強しなくては、と思います笑 中々上手くいかなくても努力は大切ですよね…!;;更新頑張ります! (2017年1月4日 1時) (レス) id: ca84e134e0 (このIDを非表示/違反報告)
あゆむ(プロフ) - 甘奈さん» 本の生産を考えると赤字すぎて震え上がるので笑 そりゃあ濁しますよ!濁しまくりです!悶々としながら作品を読んでください!笑 ありがとうございます! (2017年1月4日 1時) (レス) id: ca84e134e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あゆむ | 作成日時:2016年11月6日 18時

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