【七ページ目】拝啓 牛島若利様へ【牛島若利】

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「じゃーねAちゃん」
柔らかい表情の天童くんは、私の頭をポンポンと叩くと、教室を出ていってしまった。ちなみに牛島くんはとっくのとうに部室の方へと走っている。
それからどんどん人が少なくなっていき、やがて私一人となった。牛島くんは、普段どのくらいの時間帯に帰っているのだろう。

あの人の帰りを待っている、文章だけ見ればまるで新婚さんだ！と妄想に浸っている場合ではない。十二月考査も近づいてきたことだし、今のうちに勉強しておこう。彼と寄り道するから、きっと私の将来の幸せの貯蓄を沢山前借りすると思うから、今のうちに勤労しておこう…そんな気分で苦手な暗記教科を復習する。

ラーメン、美味しいラーメン、きっと彼と食べるラーメンは特別に感じること間違いなしで、この上なく幸せに思うのだろうなあ。「今日、友達とラーメンを食べて帰ってきます！」と母に告げたときは、「えっ、A寄り道するの！？本当！？」と驚かれたものだ。みゆきちゃん達は寮生だし、寄り道を気軽にできるような友人は一人もいなかったからである。

お母さんは思いの外喜んでくれて、「じゃあご飯食べれるかどうかわかんないけどおにぎりは用意しとくから」などとまで言ってくれた。きっとこれは友人とは誰かを詳しく教えろという意味も含まれているのだろう。男の子だと言ったら驚きそうだ。


とりあえずこれからのことを妄想して楽しんでいると、軽快なメロディーが聞こえてくる。明らかに教室の中にあるもので、私は席を立った。音の発信源を特定するためだ。

「…山形くんだ」
最近携帯を色んなところへ置き忘れる山形くんだが、こんなところに、ましてや机の中に堂々と置きっぱなしとは無用心にもほどがある。このままじゃ先生に没収されるの間違いなし。

そこで思いついたのが、あとあとやってくるであろう牛島くんに渡すということだ。それなら大丈夫だろう、とりあえず持っておこう、彼も困ることだろうし。

部屋は暖房が効いていて、長くて幅の広いマフラーをひざかけのようにしている私は若干うとうとしだしている。今さっき立って少しは目が覚めたが、きっと座っているうちにまた眠くなるんだろうなあ。

寒くなってきた、また一段と冷え込んで、寒がりの自分が何層にも渡ってヒートテックだとかを着込む季節だ。

冬はつとめて。
テストが近くなってきた。

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