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「ううん。それは気にしないで。
勘違いさせてごめんね。私の方こそ」
『ううん。Aも気にせんでな。
夢に出てくるくらい、考えてたんやな』

優しく私の髪へ触れる大吾。
指先に感じる熱に、優しさと愛情が滲む。
それは確かに感じる。

『でもな。もしAの好きな人やったら...』
『...こうしちゃうよ』

ベッド脇の引き出しへ手を伸ばして。
取り出したのは、おもちゃの手錠。

私の手首をそっと掴み、回る手錠の輪。
鉄格子タイプのベッドの、枕元の柱へ。がしゃんと音を立てて。繋がれた。
右手の自由を失った私の腕。それから、彼にそっと優しく押し倒された。

「...っ、大吾、いや、.....」
『おもちゃやで、これ。冗談やから。な。
そんな泣きそうな顔せんとって。』

何を考えてるの。
私をどうしたいの。ねぇ、大吾。
君の心理が分からない。君が抱える闇が、私には見えない。鮮明には。
大吾の心の中を覗ける力があったら。
神様、下さい。と、叶わぬ祈りを捧げたいほど。
背中へ走る冷や汗。
せめて少しでも冷静さを保とうと。必死だ。

『逆もあり得るな。
その紫耀くんが、Aのことを好きかもしれない』
「紫耀くんには、彼女がいたから。
その彼女を、ずっとずっと好きだったの。
「...それに、紫耀くんは。私を女の子としては、見てないから。...友達だもの」

信じて。大吾。お願い。
紫耀くんは、相談に乗ってくれる優しい人。
大切な友達なの。
でも私を、女として見てる訳ではない。

『今、彼女おらんのやろ?Aを奪いに来るかもしれへん』
「知ってるの、紫耀くんは。
私に彼氏がいることを。」


大吾は目を見開いて一瞬、黙り込む。

『俺はAを、そいつには渡さない。』

真っ直ぐ視線が突き刺さる。
曇りのない真っ直ぐな瞳。だが、どこか濁りのあるような、そんな風に見えた。

『ごめんな。熱くなりすぎた。
これ、外すな。』

そう申し訳なさそうに、ごめんと呟いて。
おもちゃの手錠を外した。
解放された私の右手。
私も安堵の思いがこみ上げる。

「私もごめんね。
怖かった。大吾、...怖かった」

安心したのもつかの間。涙が溢れ出す。
肩が、指先が震える。
最悪の展開を想像してしまったから。

もし、このまま外してくれなかったら。
自由を奪われたまま。何をされるか考えたら。
怖くて。怖くてたまらなかった。

心の奥で君を求めてる→←自由を奪われた右手



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作者名:若菜 | 作成日時:2017年3月31日 18時

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