君の誠実さ ページ34
『別の日。俺に電話してくれた日があったよな。
覚えてるよ。俺。...あの日、電話口でAが泣いてた事も』
私以上に紫耀くんの方が、心配なのだ。きっと。
今まで大吾にされたひどい事を、私が相談したり話してるから。紫耀くんは知ってる。
だからこそ、彼が言ってる事も理解出来る。
嘘でも適当な理由を付けて。
大吾に会わない方が、安全な選択肢なのだろう。
でもその大切なハンカチを、どうしても受け取りたい。
「ありがとう。心配してくれて。
カフェとか外で会うようにする。
紫耀くんにも一応伝えるね。会う日決まったら」
『ありがとう。何かあったらすぐ飛んで行けるようにするよ。』
「いや、そこまでしてくれなくても、」
不意打ちだった。そう言いかけた時。
また紫耀くんの右手が、私の左手に重なって。
ぎゅっと握られた。
『俺に守らせてって...言ったでしょ。本気だよ』
「....っ、」
『...生半可な気持ちじゃない』
ぐっと引き寄せられた。芯の強い紫耀くんの声に。
”俺に守らせて。”と。
何度も、何度もそう言葉にしてくれるよね。
紫耀くんは。
君の私を守りたいと言う気持ちに、嘘はないと。
信じれる。誠実な人だと知ってるから。
薄々気付いてはいたんだ。
紫耀くんが私を想ってくれていることを。
私を女として見てくれてる「好き」なのかは、
少しまだ自信はないけれど。
さらに、また熱を帯びる。重なった手。
「もう充分。いつも守ってくれてるよ。紫耀くん」
『大事だから。Aのこと。だから守りたい』
「私、紫耀くんが側にいてくれるから、嬉しいって。すごく心強いって思える。
気付いたら紫耀くんのことばかり考えて。
頼ってばかりいるけれど。
...好きになっちゃいそう」
優しくて誠実で、真面目な人。
そんな君を好きになってしまいそうだ。
今まで何度か、考えた事がある。
君に愛して貰える女の子は、幸せだなって。
『なあ、そんなに考えてくれてるの？俺のこと』
「紫耀くん、真っ直ぐだから。その想いに惹かれるっていうか.....」
今度はぎゅっと指を絡めて、手を握られる。
世間で言ういわゆる恋人繋ぎ。
そんな大胆な行動とは裏腹に。
穏やかな眼差しで優しく呟いた。
『こんな言い方、変だけど。
俺、彼女いないから。今。
...好きになってくれてもいいのに』
何を言いだすんだ。紫耀くんは。
「え？...それは紫耀くんにとっても、嬉しいの？」
『そりゃ嬉しいよ。Aだから。』
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作者名：若菜 | 作成日時：2017年3月31日 18時
