冗談で言った訳じゃない ページ31
お風呂から上がり、紫耀くんが作ってくれたご飯をご馳走になった。
カレーと、ひじきの煮物。
普段からよく自炊をしてるらしく。すごく美味しくて。紫耀くんの手料理だと思うと、さらに温かみも感じた。
ちなみに紫耀くん。今日は仕事が休みだったため、私が来る前にお風呂へ先に入っていたのだ。
『ありがとう。お皿洗ってくれて』
ご飯作ってくれたお礼にと、お皿洗い中。
台所へやって来た紫耀くん。
ワックスも何もつけてないサラサラの髪。
「このくらいさせて。ひじきの煮物も美味しかったよ。料理上手いんだね、紫耀くん」
『そう？ありがとう。普段から自炊してるんだよね俺。経済的にも良いしね』
「偉いね。しっかりしてる」
優しくて、綺麗な顔立ち。加えて料理もできる。
彼を見てると心から思う。
友達ながら素敵な人だなって。
最後の一枚のお皿を洗い終わり、蛇口を締めた時。柔らかい声で一言、呟いた。
『...彼女みたい。A』
「もう何言ってんの。お皿洗ってただけなのに」
『こういう光景、良いなって。
何気ない日常に、好きな女の子が隣にいてくれる事でさ。日々の生活に、もっと幸せを感じれるから』
『ちょっと幼くて可愛いすっぴんを、見れるのもさ。Aの彼氏じゃないと、なかなか見れないだろ』
穏やかな優しい笑顔で言う君。
とくとくと速くなる胸の鼓動。
紫耀くんが呟く一言、一言に揺れる。
好きになってしまいそう。
紫耀くんのこと。
これは見た事ないから想像だけど。
紫耀くん。彼女には、こうやって包み込んでくれるような。穏やかで優しい顔を見せるのかな。
私が知らない紫耀くんの一面を。
今までの彼女さんは知ってるのだろう。きっと。
『ソファでゆっくりしよっか』
「そうだね。もうちょっと話そう」
ソファに二人で腰掛ける。
紫耀くんと肩が触れそうなこの距離。
妙に意識がいってしまう。彼との距離。
『A。大丈夫？あれから落ち着いた？』
「うん。お風呂入ってリフレッシュ出来たよ。
それに紫耀くんが作ってくれたご飯も、美味しかったから。気持ちも落ち着いたよ」
『そっか。良かった』
少し間が空いて。真っ直ぐな視線を感じたから。
私も彼の方へ視線を向けた。
『A。』
「何？紫耀くん」
『洗面所で俺が言ったこと。冗談で言った訳じゃないよ。』
『本気でそう思ってる。Aを守りたいって。』
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作者名：若菜 | 作成日時：2017年3月31日 18時
