お互いの心の傷。 ページ4
そうAは力なく笑う。
このまま放っておける訳ない。
これ以上、Aの彼氏の暴力が酷くなる前に。終止符を打つべきだ。
『A。...また殴ってくるかもしれないし、危ないからさ。そんな彼氏とは、すぐに別れた方がいい。』
「普段は優しい人なんだけどね、たまに。すごくたまに、だけどさ。...」
『でも、女性に手をあげるような男だよ。
ろくな奴じゃないだろ』
艶のある綺麗な君の髪を。さらさらと撫でる。
不意に手を伸ばして触れてしまった。
可愛くて、髪もすごく艶があり綺麗。
俺が悩んだ時。嫌な顔せず。耳を傾けてくれる優しい君。
Aは友達で、俺の彼女ではないけれど。
それでも。すごく。すごく魅力的な女性だ。
『...俺は。いやだ。見たくない...。』
『これ以上、Aが傷つく姿なんて。
一人で家で泣いてるとこも。』
「紫耀くん...」
「優しいね。ありがとう。」
穏やかな柔らかい笑みを浮かべた後。
そして、どこか悲しみの滲む瞳で。
淡々と言葉を、声へ乗せていく。
「紫耀くんの彼女は、ひどいな。
...こうやっていつも紫耀くんに、守って貰ってたはずなのに。
一途に真っ直ぐ、愛して貰っていたはずなのに。」
『...っ。A』
「こんなかっこよくて魅力的な人を。
...浮気で。簡単に、紫耀くんを傷つけて。」
思いも寄らなかった君の言葉に、胸が熱くなる。
ぎゅっと締め付けてく。
情けなくも、泣いてしまいそうだ。
もうAのその想いだけで。
俺は十分。十分だよ。明日からも顔を上げて、前を向いていけそうだから。
『ありがとう。...A』
『俺、元気出てきた。Aのおかげ。』
Aにはお見通しなのかな。
そのままの俺を受け止めてくれるから。
あっけなく浮気された情けない男だけれど。
それでも俺は彼女を、心から愛していた。
俺が守ってあげたいと、いつも思ってた。
他の男へ浮気されるまでは。
そう。...裏切られるまでは。
「良かった。紫耀くんが少しでも元気になれて」
『Aに聞いて貰えて、肩の荷が降りたよ』
くしゃっと目を細めて笑うもんだから、俺もつられて笑った。
Aの笑顔を。
俺が守ってあげられたら、いいのに。
『何かあったら俺に連絡して。』
「ありがとう」
Aのこと。一人の女性として意識してるってことなのか...？俺は。
これは恋なのか。否か。
弱さを受け止めてくれたのが、優しいAだから？
この揺れる二つの感情は、友情と恋？
俺は今、その狭間で揺れている。
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作者名：若菜 | 作成日時：2017年3月31日 18時
