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気にかけてくれた事が嬉しくて ページ26

「そうなんだ。ふっ切れて良かったね。
紫耀くんが、これで新しい恋にも進めるってことだからね」

清香さんのこと。ふっ切れたんだ。あれから。
浮気をされて傷付いて。その後、紫耀くんは自ら別れを告げた。
相談を持ちかけられたことが、懐かしい。
浮気をされて落ち込む彼を見ていたからこそ、心配であった。心の奥で実は。
ふっ切れたなら、私もホッとした。良かった。これで恋愛において、前に進める訳だからね。めでたいことだ。

『ありがとう。優しいな。Aは。』
「あの当時。相談を受けてたし、落ち込んでた紫耀くんを知ってるからね。なおさらだよ」

不意に、彼の両腕がそっと私の腰へ回る。
視線が交わる。ビー玉みたいに綺麗で優しい彼の瞳。

『なあ、A。』
『嫌だったら、俺の腕を振りほどいて。』
『まだベッドの中にいたい。ダメかな?
しばらく...、こうしてたい。』


落ち着いた掠れた声に滲む、誠実さ。
腰に添えられた腕から伝わる彼の熱、体温。


『元彼女との件を。心配して、気にかけてくれてた事が嬉しくてさ。』
「紫耀くん...」

穏やかな顔で彼は微笑んだ。
断る理由を一応、なぜか探ってみたけれど。
これと言って見つからなかった。

「いいよ。でも、どきどきしちゃうよ。どうしても。...かっこいいから。紫耀くん...」
『へへ、嬉しい。ありがとう。』

紫耀くんが目の前にいる。
体温を感じれる距離にいる。
まだ直接、聞いた事がないんだけれど。
紫耀くんは、私をどう思ってるのかな。
友達。友達だと思うんだ。きっと。
でも、私の腰へ添えられた彼の腕。
これは、友達より彼女にする事の方が自然なはずなのだ。本来。

私をどう思ってるのかな。紫耀くん。


『A?』
「ごめん。ボーッとしてた」
『首のとこ、昨日より赤みがひいてるね。ちゃんと。良かった』

頭の中でぐるぐると考えていた時。
彼が不意に、昨日の私を労わる言葉を掛けてくれて。冷静さを取り戻した。

「...紫耀くん。ごめんなさい。心配かけて。」
『謝らないでよ。怖い思いをさせられたのはAの方なんだから。
苦しかったよな。怖かったよな。』


悲しそうな顔。
紫耀くんの心配してくれる思いに、感極まりそうになったけれど。涙を見せたくなくてグッと堪えた。
ここで泣いてしまったら、君は優しいから。
もっと心配させてしまうでしょう。

今の私にとって、紫耀くんはどれほど心強いか。

彼の提案→←抱き枕と間違えてる?



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作者名:若菜 | 作成日時:2017年3月31日 18時

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