痛み、歪みも恋のうち (ページ18)

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『ちょっとお仕置きに、首絞めただけ。
来てみりゃ分かるわ。助けに来れば、Aも喜ぶんちゃうかな。...紫耀くん』
(ふざけんなよ。俺は貴方を許さない。)
『それはこっちの台詞やわ。
Aをそそのかしやがって。お前のせいや』

スマホを握りしめたまま。
おもむろに、おもちゃの手錠の物だと思われる、小さな鍵を取り出す。

それからすぐに通話ボタンを切って。
なおも私へ馬乗りになったまま、見下ろしながら。淡々と呟いた。

『あいつが来るだろ時期に。紫耀くんが。』
「大吾...っ」
『じゃあな。...A』

そう冷めた声で呟いた大吾は。
ベッドから少し離れた場所にあるテーブルへ。
おもちゃの手錠の鍵を置いて。
私の家から出て行った。

ドアがパタリと閉まった後。
妙な静けさと、残る心の奥に鉛のような重み。
まず何とかしなきゃ。これを。
今も自由を奪われたままの左手を、何とか解放したい。

左手を繋なぐスタンドランプは重いゆえ。
起き上がろうと試みても、思うように体を動かすことが出来ない。

ベッドよりも少し離れた位置にあるテーブル。
その上に鍵がある。
まだ状況的にはマシだろう。彼は鍵をわざわざ置いて帰ったのだから。

「鍵...。そこにあるのに...」

届かない。自分の腕が空(くう)を切る。
手を伸ばしても。虚しい事に、それは届かない距離。
自力で外してしまいたいのに、出来ない。
悔しさが、私の胸をぐっとえぐる。
左手を早く解放したい。
外したい。早く外したい。これを。
むしろ引きちぎりたいくらいだ。この忌まわしい鎖を。

「.....っ。」

紫耀くん。
本当に来てくれるかな。
迷惑掛けてばかりだから、ごめんねって謝らないと。

紫耀くん。
紫耀くん。
今誰よりも、君に一番会いたい。