痛み、歪みも恋のうち (ページ15)

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時刻はもう22時を過ぎていた。
私はシフト制の仕事ながらラッキーな事に、連休で。明日まで休み。
でも、紫耀くんは明日も仕事だから。そろそろ帰らせてあげないとね。
玄関で紫耀くんを見送る。

『ありがとうな。ご飯わざわざご馳走してくれて。めっちゃ美味しかったよ』
「お礼を言うのは私の方。話を聞いてくれて、終いにはぼろぼろ泣いて。情けないとこもいっぱい見せたけど。
ありがとう。紫耀くん。元気貰えたよ」
『Aが元気になれたなら、良かった。
安心したわ俺も。』

紫耀くんが不意に、私の頭をそっと撫でた。

『ちゃんと戸締まりして寝るんだよ』
「...っ、気をつけるね」
『じゃあ、またな。』
「じゃあね。今日はありがとう」

くしゃっと目を細めて笑い、手を振る彼を。
エレベーターへ歩いて行く紫耀くんを、見送った。

明日は、大吾とお互いの休みが合ったので。
私の家へ来る約束をしている。
彼へ貸していたCDを返してくれるそうなので。
その事情も兼ねて。
明日こそチャンスだろう。
私は大吾へ告げるつもりでいる。
別れようと。

この日の私は、まだ知る由もなかった。
忍び寄る彼の魔の手を。
歪んだ愛情を、狂気を剥き出して。

明日。彼の手に寄って身も心も
ずたずたにされる恐怖を。