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困った顔を浮かべながら。
そう彼は問いかける。
静かな部屋。彼の言葉が、私の脳裏へ響く。
「.....っ、紫耀くんに隠してたのに。
心配かけちゃうから、」
『隠さなくていい。...俺の前では』
「っ、紫耀く、....」
ぐっと引き寄せられた体ごと。
背中を優しく摩る、紫耀くんの腕。
ふわっと、ほんのり香る爽やかな香水の匂い。
服の上からでも伝わる引き締まった体。
そして、安心する紫耀くんの体温。
初めて肌で感じる君の体温。
彼氏のいる身で、多少の背徳感を感じながらも。
どこか安心して、安らぎを感じてる自分がいる。
心の奥で。
『彼氏でもない男だけど。
Aが落ち着くまで、こうしてたい。嫌じゃなければ。』
「嫌じゃないよ。紫耀くん...。こうやって優しいから。泣いちゃいそう」
『いいよ。泣いて。Aが少しでも気持ちが楽になれるなら。我慢しないで、な。』
背中をとんとんと摩る腕が、すごく優しい。
私のために、ここまでしてくれる。
紫耀くんの温かさや、優しさが。すうっと私の心を軽くさせるの。
この頃、気付いた事がある。
君の前では素直でいられるんだ。私。
どんな時も。
「.....っ、ぅ、」
『A...』
また涙が頬を伝った。
紫耀くんは私が落ち着くまで、ずっと。
背中をとんとんと優しくさすってくれていた。
「紫耀くん。ありがとう」
『もう大丈夫なん？』
「うん。情けないとこ見せてごめん。ありがとうね」
涙も止まり、呼吸も落ち着いた頃。
紫耀くんの優しい腕をそっと振りほどいた。
時刻は20時を回った頃。
夜ご飯は、当然ながらこれからだ。
泣いてしまい、情けないとこも見せてしまった。
そんな私にも嫌な顔一つ見せずに。受け止めてくれた彼。
せめてものお礼がしたい。紫耀くんに。
「紫耀くん、良かったら夜ご飯食べて行かない？」
『え、そんな。いいの？』
「もちろん。せめてものお礼」
待って貰ってる間。紫耀くんのグラスのアイスコーヒーを、継ぎ足して。
いざ、キッチンへ。
冷蔵庫の中身を確認。丁度お肉が余ってる。
生姜焼き、きゅうりとパプリカのサラダ、
冷蔵庫に作り置きしてたひじきの煮物、
あとは...わかめスープにしよう。
生姜焼きのお肉を焼いてる時。
ソファからキッチンを覗く彼の姿が。
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作者名：若菜 | 作成日時：2017年3月31日 18時
