心の奥で君を求めてる ページ11
『ごめん。A。ごめんな。怖がらせて。
泣かせるつもりはなかってん。』
「.....っ、ぅ、」
彼の温もりが私を包む。
私の背から伝わる指先の温かさは、確かに感じるのに。
垣間見えてしまった。君が心に抱える闇が。
歪んだ愛情が。
「...っ、」
紫耀くん。
紫耀くん。
声が聞きたい。会いたい。
ただ話を聞いてくれるだけで、いいから。
今、心の奥で。君を求めてる。
―――――――
その後、お昼近くまで大吾と過ごしたが
用事があるから。と嘘を付いて。
彼の家を後にした。
その後、心を落ち着かせたくて。
温かいレモネードを飲みながら。しばらく2時間ほど、カフェでやり過ごした。
これは自分の身の安全を守ろうと、付いた嘘。
嘘も方便。そう思いたい。
だが、罪悪感で胸がずきずきと苦しい。
紫耀くんのことを言い訳するのも。
大吾へ嘘を重ねてるようで。
ふと開いたスマホの画面に映る連絡先。
”平野 紫耀”
紫耀くん。
私は君へ頼り切って甘えてる。
大吾のことで悩むと。君へ話したくなるの。
ううん。それと同時に、私は求めてるんだ。
心の奥で。
紫耀くんの優しさ、そのままの私を受け止めてくれる温かさを。
先に「都合が合えば、話を聞いて欲しい。」と。
メールする方が、常識ではあるだろう。
でも、声が聞きたい。
紫耀くんの安心するハスキーな声を。
思い切って押した。通話ボタンを。
『...もしもし？A？』
「...紫耀くん。ごめんね、突然電話かけて。」
『ううん、大丈夫だよ。』
「もう仕事あがってる？」
『あがってるよ。今、家にいる』
「お疲れさま。...話したいことあって。都合の良い日。少しだけ時間貰えないかな？」
『何かあったん？良かったら、これから会おうか？』
紫耀くんの声。
温かく優しいから。安心する。すごく。
「...っ。紫耀くんの声、...安心する」
思わず不意に、涙が溢れそうで。
必死にこらえる。泣かないように。
『A？、どしたん。...泣いてるの？』
「...ううん。泣いてないよ。」
『今、どこにいるか教えて。俺、向かうから』
「...家。自分の家にいる。」
『わかった。今すぐ行くから。待っててな。』
「うん、待ってる。ありがとう。紫耀くん、」
通話ボタンを切った後。
まるで緊張の糸が切れたかのように、
ぶわっと涙が溢れ出した。
「....っ、ぅ、.....」
紫耀くんの声に安心して。
仕事帰りに、わざわざ私へ会う時間を作ってくれる君の心の広さも。嬉しくて。
涙が溢れる。
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作者名：若菜 | 作成日時：2017年3月31日 18時
