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2016年6月。
リオオリンピック世界最終予選。


「……っ、」


このときの光景は、未だ鮮明に記憶に残っている。











確か私は、泣いていた。














清水「ごめん、A」


福澤「ほんとにごめん」


「なんで2人が謝るのよ、あんたたちのせいじゃない…まだ、チャンスはあるよ」


清水「でも…」






「くよくよすんな!ここで諦めるの?」






「……!」


清水と福澤にとってはこのリオオリンピックがラストチャンスのはずだった。


でも、ここで終われない。


「まだ東京オリンピックがある。そこまでがんばろうよ」


福澤「お前はまたそんなこと言って……」


「約束したでしょ、あんたたちが引退するまで私はトレ
ーナーの役割を果たすって」


清水「そうだな、」


正直、このときの2人の姿は見えていない。

















いや、見えていなかった。














柳田「Aさん、」


「も〜……柳田そんな顔しないでよ〜!せっかくのイケメンが台無しだよ?」


柳田「……すみません」


「謝らないで、柳田たちはまだこれからがある」


たいして大きくない私の身長だけど、腕を精いっぱい伸ばして柳田の頭を撫でた。


「石川もそんな顔しない、の……」


正直、無理をしていたのかもしれない。


ふっと体が脱力する感覚。


「Aさん!」


「A!!」


2人にあんな偉そうなことを言ったけど、トレーナーとして、私は何もできなかった。


気を失う直前、そんなことを思った。


体は叩きつけられることなく誰かに受け止められたことことまで覚えている。


























「Aさん!!」



















近くで誰かが私を呼んでいたことも。







__________
相田A
トレーナー(パナソニック・全日本)

清水、福澤と同い年
ほぼ同時期にパナソニックに入った。

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作者名:Lal | 作成日時:2020年4月28日 12時

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