肆話 ページ5
side 炭治郎
鬼の匂いに血の匂いが混じっている。
どうやら相手は怪我を負っているらしい。
それなら好都合だ。怪我を負っている鬼は___強い鬼は例外だが___少しだけ動きが遅くなるし、血の匂いはわかりやすいので後も追いやすくなる。
夢中で追っていると、だんだん匂いが強くなってきた。
(あと少し……!)
そして、手を伸ばせばその背に届くというところで______鬼が、振り返った。
.
すかさず刀を振るう。
後方に避けられたせいで、俺の刃は鬼の頬を掠めるだけだった。
羽織の頭巾を深くかぶったその鬼は方向を変えて逃げようとしたが、善逸がいることに気づき、一瞬怯んだ。
その隙を見逃さず、腹に思いきり蹴りを入れる。
「善逸、押さえろッ!!」
「わ、わかった!!」
善逸は鬼に馬乗りになって手首を押さえつけ、首を圧迫した。
「っ、」
「炭治郎、こいつ、気絶した……」
「え? ……あ、本当だ」
警戒しながらも近づいてみると、どうやら本当に気を失っているらしい。
起こさないように、そっと頭巾を指でつまんでずらした。
善逸が声をもらし、俺も思わず息を呑んだ。
「うわ、美人……」
その下から現れた少し幼さの残る顔は、今までに見た誰よりも美しく見えた。
長い睫毛の下から、鮮血の色がちらりと覗いた。
.
side ???
ふっと意識が浮上したとき、俺の目の前には二人の人間がいた。
ひとりは金髪、もうひとりは花札のような耳飾りをつけている。そして、どちらも鬼殺隊の隊服を着ていた。
______鬼狩り。
鬼狩りは苦手だ。俺を見つけるとすぐに殺しにかかってくる。俺の気配が鬼に酷似しているとか、そんな理由で。
「お前が、麓の村で人を食い荒らしている鬼か」
耳飾りをつけた方が俺に尋ねてきた。
怒りを抑え込んでいるような冷静さが彼の声からは感じられた。
俺が何も答えずにいると、彼が俺の首に刀を押しつける。黒刃の日輪刀が、首の皮膚を裂く。
答えねば首を斬るという脅しのつもりなのかもしれないが、俺にはあまり効果はない。
俺は死なないから。……死ねないから。
「……これだから鬼狩りは嫌なんだ」
思わず口から出たのはほぼ聞こえない程小さな言葉だったが、金髪の方が僅かに眉根を寄せた。
もしかしたら耳がいいのかもしれない。
「俺は鬼じゃない」
鬼か否かと問われれば答えるのは容易だ。
日輪刀で首をはねられようが、陽光に晒されようが俺は死なないのだから。
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watanuki - 更新、自分のペースで頑張ってください!笑私も作者をしていたことがあったので作者さんの気持ちは痛いほどわかります..(違うかったら恥ずかしい)後進遅かろうが早かろうが私はこのお話が好きなのでずっと待ちますよ!応援してます! (2020年2月26日 7時) (レス) id: 75a3120b9c (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - 続きまだ? (2020年2月23日 5時) (レス) id: 4d4917b86c (このIDを非表示/違反報告)
ひろと(プロフ) - 雨鷽さん» 返信遅れてすみません、コメントありがとうございます!!そう言っていただけて光栄です…!頑張りますのでよろしくお願いします!! (2019年10月13日 9時) (レス) id: b46ce5af38 (このIDを非表示/違反報告)
雨鷽 - この小説、めっちゃ好きです!!頑張ってください! (2019年9月11日 21時) (レス) id: 7a91fc9f4d (このIDを非表示/違反報告)
ひろと(プロフ) - 犬田さん» コメントありがとうございます!!こういう設定大好物なもので、衝動に駆られて後先考えず書いてしまいました…へへっ(( 応援ありがとうございます(〃ω〃) (2019年8月27日 20時) (レス) id: b46ce5af38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひろと | 作成日時:2019年7月21日 20時