一時だけでも幸せを (ページ30)

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大好きよ、リリィページ30

「そうですか……」

ため息をつきながらリリィはルフィに近づくと、その手に持っていた手紙をルフィの胸へと押し付けた

「これは、A様の好みからダメなものまですべて書いてあるものです……ああ、勘違いしないでくださいね、あなた達のために書いたものではなく、本来は新しく屋敷で務める者達のために書いたものですので」

「あ、あぁ……」

「いいですか?もし、A様も悲しませるようなことがあれば……私があなたを殺しに行くと思いなさい!!何があろうとこの方を守りなさい!!」

「おう!!任せとけ!!」

勢いよく頷くルフィと、満足気なリリィ
どうして?
ぜったい許してくれないと思ってたのに
連れ戻されると思ってたわ

リリィの目はこちらへと向けられる

「A様…」

『リリィ……ごめんなさい……ごめんなさい』

自然と涙が溢れてきた
リリィは優しく微笑みながら暖かい手で私の頬に触れる

私は…こんなにも優しい人を騙したのだ
ごめんなさい
ごめんなさい、リリィ

「ほらほら、泣きやみなさいな。あなたには笑顔しか似合いませんわ。ほら、笑ってくださいませ」

『リリィ…私ね、海に行きたかったの。自由に旅してみたかったの』

「えぇ、えぇ…知っておりますわ。この私があなた様の願いを知らないとでも?」

『ごめんなさい…』

「いつまで謝るのですか？…あなた様が信頼出来る者達と旅をするのなら私は止めませんことよ？」

優しい
優しいね、リリィ

「A様」

『ルワード?』

大きなトランクスを片手に、ルワードは近づいてくる

「リリィさんと私で旅に必要なものを詰め込んでいます。当分は服など困ることはないかと」

『ありがとう…あなたにも迷惑かけたわね』

「いいえ。私を救ってくれたA様なのに、どうして迷惑だなんて思えましょう。心ゆくまで楽しんできてください」

よかった
ルワードっていつの間にこんなに笑えるようになってたの？
知らなかった
ずっと硬い表情だったのに

「そんじゃ、お許しも出たことだし行きますか」

サンジが私を抱えたまま歩き出す

「行ってらっしゃいませ、A様!!」

「どうかご無事で!!」

『ありがとう…リリィ、ルワード!!大好きよ。半年後には戻ってくるから!!』

ルフィとサンジの歩みは止まらない

前を見れば大きな船
そして、夜が明ける合図に空には赤みがかかっていた