一時だけでも幸せを (ページ19)

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不思議な人ページ19

「それでよォ、みんなしてどっか行っちまうんだよ…おれ、腹減った」

『まぁ…お菓子食べる？』

リリィが持たせてくれたお菓子をその人に渡す

あれから、川を飛び越えてこちらに来たその人は、私の隣に座っていた
名前はルフィと言うらしい
目の下の傷あとと胸のバツ印のような傷跡が特徴的だった

なんでも、無人島だと思って上陸したルフィとルフィの仲間たちは島を探索中にはぐれてしまったらしい

「これ、うめぇな!!」

『でしょ!!?私もそのクッキー好きなの』

リリィの手作りだ
私が作ったわけでは無いけれど、嬉しそうに食べてくれたら私も嬉しくなる

『あなたたちは何をしてるの？』

「おれたちか?おれたちは海賊なんだ!!」

『海賊!!?』

びっくりした
いや、何となくそうかもしれないと思ってはいたが…

『海賊ってことは自由に旅するの?』

「あぁ!!自由じゃなきゃ海賊じゃねぇからな!!」

にししし、とルフィは笑う

自由…
その言葉に憧れしか感じない

『いいなぁ……楽しそうで』

「おう!!おめェは…楽しくねぇのか?」

その質問に、私は軽く首を振った

『私には…自由が無いから』

縛られて、籠に閉じ込められて…

「なんだそれ。お前、自由になりたいのか?」

自由になりたい…

『出来るなら…出来ることなら自由になりたいわ』

私のその言葉に、ルフィは二、三度まばたくと、じゃぁよォと声を出した

「お前、おれの仲間になれよ」

『え？』

「おれたちは自由に旅してんだ。お前が仲間になったら、お前も自由なんじゃねぇか?」

強引だ
あまりにも強引すぎる考え

だけど、悪い気はしなかった

『ふふっ、あなたが私を自由にしてくれるの？』

「あぁ!!」

元気よく頷くルフィに笑いがもれる

こんな人、初めて見た
不思議で
でもこの人がそばにいれば元気がでて
たぶんこの人は、みんなに愛されて生きて来たのだろう

『でも無理よ、ルフィ』

「なんでだ？」

なんでってそりゃ……

『私は普通の人じゃないから』