子供11人 ページ12
五条side
悠仁達と任務の話を楽しそうにする萌黄 栞は、日が経つに連れて、嫌いだった彼奴の顔に似てきた。
『悟、聞いてくれないか』
俺の部屋でゲームをやっている最中、ふと傑が手を止めた。
『何? 急に真面目な顔をしちゃって。キモいよ』
『お願いだ。真面目に聞いてくれ』
傑はコントローラーを置き、真っ直ぐ俺を見た。
『私は今、好きな人がいる』
『は……へぇ』
傑の真剣な目を見て、何だかモヤモヤしてきた。
イライラもする。
『常なんだ』
『ゴフッ……は?』
主語が無くとも、何となく分かってしまった。
(傑が、常の事、好き……?)
何度も頭で咀嚼する様に反芻する。
『……呪術師同士の恋愛が報われるとは思っていない。それでも……好きなんだよ』
(告れば良いんじゃね?)
一言が喉につかえて言えない。
何だろう。
凄くモヤモヤする。
『……彼奴も……』
『……?』
ようやく捻り出せた一言は
『彼奴もお前の事好きだと思うよ』
酷く無責任な言葉だったと思う。
『……ありがとう』
傑の普段見ないような笑顔がイライラした。
俺と話している時では見せない様なその笑みが。
数日後、傑から無事付き合えた、と報告された。
今思えば単なる嫉妬だった。
親友が誰かの物になる、そんな独占欲の暴走だった。
例えるならば、娘を取られる父親の気持ち。
大人になった今なら分かる。
今なら出来る。
あの時、2人を心の底から祝福してやるべきだった。
あの後すぐ、2人は高専から逃げた。
まるで愛の逃避行の様に。
実際そんな綺麗なものじゃなかった訳だけど。
今、仮に僕が呪術師と言うレッテルを脱ぎ捨てて、最強と言うレッテルを脱ぎ捨てて、彼奴も呪詛師と言うレッテルを脱ぎ捨てて話せるとして、彼奴は俺に何て言うだろうか。
『い、嫌ぁ……』
自分の最愛の人を殺した怒りをぶつけるのか。
それとも……自分の、自分達の道を後悔し、自己嫌悪に陥ってしまっているのか。
今、悠仁達と遠くで遊んでいる萌黄 栞。
初めて会った時もっと小さかった。
だから、見て見ぬ振りが出来たのに。
「……やぁ! 僕も混ぜてよ」
「げぇ、五条先生」
「野薔薇その反応は無いよ」
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作者名：陽毬 | 作成日時：2021年4月1日 16時
