気まずい ページ15
ホテルに着くと、いっくんと田中さんが待っててくれていた。
｢遅いわぁ、はよ来て｣
いっくんが手を振る。私たちは走ってみんなの元へ向かった。
｢先に部屋に行ってても良かったのに。｣
私が言うと、いっくんは照れくさそうにしていた。
｢別にええやろ、そんなん俺の勝手や。｣
(いやツンデレかっ！)
心の中でいっくんにつっこむと、あたりを見渡す。
｢あの、ヒカルは？どこ？｣
｢もう部屋行ったよ。みんなも早く行こう。｣
田中さんが言った。
待っててくれなかったんだ。こういう時、いつもヒカルは私のことを待ってくれている。でも今日は違った。
(やっぱり、昼間の時の怒ってるのかな…)
重い足取りで部屋へ向かう。
かすちゃんとは部屋が違うけど、2階に大きな露天風呂があるらしいので、一緒に行く約束をした。
みんなとわかれて、いっくんと田中さんと一緒に部屋の前に来た。
ベルを鳴らすと、ヒカルがドアを開けてくれた。
｢おー、帰ってきたんか。｣
いつもの声のトーンで話すヒカル。
でも、目は合わない。合わせられない。
｢ただいまぁ、ヒカルさん編集してたんすか？｣
いっくんが尋ねると、ヒカルもいつもの調子で話している。
(嫌だな…私とヒカルだけ、なんだかギスギスしてる。)
はぁ…と大きなため息をつくと、田中さんが心配してくれた。
｢Aちゃん、どうした？元気ない？｣
｢えっいや、ううん、平気。ちょっと疲れちゃっただけだから。少し横になるね。｣
まだ17時だった。かすちゃんとの約束の時間まで、3時間もある。少し寝ようと思っていた。
｢そっか。何かあったら言ってね。俺ら、１回外で撮影してくるから。｣
｢うん。えっ、俺らって…｣
｢あぁ、いっくんと。大丈夫、ヒカルさんが部屋にいるから。｣
(えぇっ、うそ…)
｢じゃ、じゃぁ、私とヒカルだけ？｣
｢そうだよ？｣
(めちゃくちゃ気まずいじゃん…！
どうしよう、私も部屋出てついて行こうかな…
でも迷惑かかっちゃうよね…)
私が色々考えていると、田中さんが言った。
｢多分、2時間くらい帰ってこないと思うけど、9時頃までには帰ってくるから。｣
｢あ、うん…｣
私が弱々しく返事をすると、玄関先からいっくんの声が聞こえた。
｢はよ行こ、時間なくなる！｣
二人共、部屋を出て行った。
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作者名：ふぃゆ(fwiyu) | 作成日時：2017年8月18日 15時
