8 ページ9
｢夜に戻ってくるって言ったくせに、戻ってこなかった！
毎日、寝ても起きても私は独りぼっちだ！！
愛してくれるって誓ったくせに！！
先に破ったのはお前じゃねぇか！！！｣
涙が溢れてしまう。
あれだけ我慢したのに、口に出すと止まらない。
｢私は…私は頑張ってたのに！！カタクリの前ではキレイで居たいから、寝るために睡眠薬まで飲んだし、遠征については文句だって言わなかった！！無理矢理元気でいようとしたし、フランペに呼ばれた時だって、何も言わずに送り出しただろ！？
なぁ、飽きたんだろ？私なんて要らないんだろ？さっさと捨てろよ！中途半端な愛なんて要らねぇんだよ！！｣
思いを全て口にした。
私の一方的な愛なんて虚しすぎるから、こっちから別れを告げたのに。
文句を言われる筋合いなんてない。
｢俺がいつ、愛してねェなんて言った｣
｢…愛してるとも言わなかった｣
暫く、沈黙が続く。
カタクリに手首を捕まれているため、涙を拭うことも出来ない。
早く、何か言ってくれ。
もう答えなんて分かってるんだから。
どうせ今ので嫌になったはずだ。
めんどくさいだろ。
欲張りだろ。
嫌われたはずなのに、
…なんでそんな顔してるんだよ。
｢悪かった、気付いてやれなくて｣
｢もう遅ぇよ…｣
｢もう一度、やり直せないか｣
｢…無理だよ。
私、もう嫌なんだ。裏切られるのも、愛されないのも、寂しいのも…全部、辛いんだよ！｣
｢もう、一人にしねェから｣
｢信じられねぇよ…信じるのが、怖いよ…｣
カタクリは体を起こして、泣きじゃくる私をそっと抱き締めた。
｢思ってること、全部言え。お前の全部を愛してやるから｣
｢今更、そんなの…｣
｢俺を見ろ、A｣
恐る恐る顔を上げると、唇に、柔らかい感触がした。
すぐに、キスされたんだと分かった。
その時に見たカタクリの目は、真っ直ぐで、優しくて、苦しくなるほど、愛しかった。
｢寂しかった！｣
｢お前なら大丈夫だと思っちまった。悪かった｣
｢我慢するのが、辛かった！｣
｢するな。全部、受け止めてやる｣
｢一番に、愛して欲しかった…｣
｢愛してる。お前が居ないと、俺は、生きていける気がしねェんだ｣
情けない。
絆されて、また、人を信じてしまう。
それでも私は、人を信じることをやめることは出来ない。
暖かいこの思いを、手放すことができない。
この気持ちが｢愛｣なんだと、私は思う。
fin.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柳 | 作成日時：2020年1月29日 0時
