【文スト】弐・友人が話していた人間失格の息子になった件について【男主】 (ページ42)

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七十四話＿隠したがった理由ページ42

織田は太宰の推理はあまり認めたくない様子だ。

太「あの傘の濡れ方は二.三分使われた感じじゃない。たっぷり三十分は雨に打たれてた筈だよ。それだけ雨の中にいたにしては安吾の靴も絝の裾も乾いていた。取引が二十時で我々が会ったのが二十二時。取引の後、二時間では乾くのに時間が足りない」

織「着替えを持っていたのかもしれない」

太「Aが寝てしまってね。酒場からの帰りに安吾の車に便乗したが、靴も着替えも無かったよ。私の予想では安吾は取引には行かず雨の中誰かに会い三十分くらい会話してから残りの時間を潰して帰ってきた」

Aはこの会話を聞いてとりあえず安吾が何か秘密を持っている事だけは判った。
まだ三歳には意味が判らなくて当然である。

太「安吾の様な情報員はしばしば路上を密会の場所に選ぶ事がある。室内より密談に向いてる」

織「安吾はポートマフィアの秘密情報員だ。誰にも明かせぬ密会の一つや二つあるだろう」

太「ならば一言云えばいい。云えないと、そうすれば私も織田作もそれ以上は聞かない。Aだってポートマフィアの事は理解してる。必要以上の事は聞かない。そうだろう？」

「うん…」

ベ「クゥン…」

Aは暗い雰囲気に耐えきれれずベイリーの頭を無心に撫でた。
これからどうなるの？
その言葉で頭が埋め尽くされた。

太「なのにアリバイまで用意して密会を隠したかった理由は……」

ベ「ガルルルル！！」

「ベイリー？」

ベイリーが吠えた方向を見ると先程まで床に倒れていたミミックの一人がグラオガイストを構えているでは無いか。
Aはベイリーのリードを引っ張り織田に後ろに隠された。

太「おやおや、大した精神力だね。実際の所私は君達を敬意しているのだよ。これ程正面からポートマフィアにぶつかってくる組織は無かった」

太宰はゆっくりととミミックの男に笑顔で近づいた。
その笑顔すらこの状況に似つかない。

織「太宰…よせ…！」

織田は太宰に向かって手を伸ばしたが太宰には届かなかった。

「パパ……」

太「私の目の中の歓喜が君にも見えることを願うよ。君がほんの少し指を曲げるだけで私が最も待ち焦がれた物が訪れる。唯一の恐れは君が狙いを外す事だ。だが、出来るさ。君は狙撃手だろう？」

織「太宰…！！」

Aはそんな己の父親をぼーっと見ている事しか出来なかった。