六十一話 ページ12
「お姉さんがお客さん？」
蹲っていた少年は、私を目に入れるなり呟いた。光を灯していないその双眼は、果たして本当に私のことを見ているのか不安にさせる。
私は客なのか、と言葉の使い回しに疑問を抱きつつ、先程の院長先生の言ったことを思い出して頷いてみた。
『客が中のヒトフタサンヒト番に用事だ』
院長先生が言ったのなら、この孤児院において里親候補は客と呼ばれるのかもしれない。
または、引き取るときに金銭が発生するからという可能性もあるが。
まぁ、ひとまず私は“客”ということで良いのだろう。私は顔を上げたまま座っている少年の元に歩み寄った。
「中の子にね、ちょっと用事があるの」
なるべく自然になるように、笑顔を顔に浮かべる。この子が何を考えているのか考えもつかなかったが、私を敵対視しているようだったからだ。
すると、蹲っていた少年はスッと立ち上がった。鋭かった視線が瞬時に和らぎ、私との目線がほんの少し近くなる。
何をするんだ、と彼を注視していれば、少年はゆっくりと口を開いた。
「中にいるのは反抗的だし、やめた方がいいと思う。代わりに俺が相手するよ？」
下から私の顔を覗くようにする少年。敵対心丸出しの今までの視線と違い、突然に笑うかのような表情をしていた。
何を言っているのか全く持って分からなかったが、雰囲気から、中の子供を守ろうとしているのだけは感じ取れる。
「俺が、代わりになるから」
少年は何度も何度も、その文章を繰り返す。上目遣いに、悲しげな顔を隠すような作り笑い。
その文脈といい、表情といい。
彼がまともなことを口にしているとは思えない。どうも、自分を犠牲にしているかのような雰囲気があった。
私がそんな彼を見て戸惑っていると、院長先生が私の後ろから歩いて出てくる。
「マルナナマルキュウ。安心しなさい。彼女は里親候補です」
院長先生の話を聞くに、院長先生は少年の言葉の意味を理解したのだろう。退きなさい、と命令したときよりも何十倍も優しい声色で言った。
「そうなんですか」
すると、あれほどまでに笑っていた少年は、波が引くかのようにその笑みを消す。
悲しそうな顔で、じっと床を見つめていた。
「……子供部屋に戻ってなさい」
院長先生が少年に言う。
はい、と小さく呟かれた声と共に、少年はポツポツと廊下の先に消えて行った。
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ニゲラ*(プロフ) - 壱樹さん» 返信遅れてすみません！コメントありがとうございます、一番大好きだなんて……本当に嬉しいです！更新遅くなって申し訳ないです。もう少ししましたら忙しい時期を抜けると思いますので、もう暫くだけ亀さんペースをお許しくださいませ。これからも頑張りますね(*^▽^*) (4月8日 16時) (
レス) id: 7f55ccc0a8 (このIDを非表示/違反報告)
壱樹 - めちゃくちゃ良いです…！今まで見た小説の中で１番大好きです！これからもがんばってくださいっ！ (4月4日 17時) (レス) @page18 id: d010ee6f51 (このIDを非表示/違反報告)
ニゲラ*(プロフ) - 群青色の匠さん» 本当に文字化けの件はご心配おかけしてしまったようで……バグではなく正常動作です！応援コメもありがとうございます！読者様方には本当いつも励まされております……更新スピード落とさぬよう、努力していきます！この先も宜しくお願いします(^-^) (4月1日 13時) (レス) id: 7f55ccc0a8 (このIDを非表示/違反報告)
ニゲラ*(プロフ) - みどさん» 文字化けはエイプリルフールのちょっとした冗談です、笑って許してくださいませ……水色さんや緑色さんはもうしばらく先になってしまうかと思いますが、もう登場までのプロットのようなものはできていますのでお楽しみに！（なるはやで文字起こしします！） (4月1日 13時) (レス) id: 7f55ccc0a8 (このIDを非表示/違反報告)
ニゲラ*(プロフ) - おださん» またまたコメントありがとうございます‼︎通知気付かれてすぐに来てくれているのですね……！そこまで楽しみにしていただけているなんて本当に喜ばしい限りです！おだ様含めた読者様方のために、この先も尾も白い作品作り頑張りたいと思います！ (4月1日 13時) (レス) id: 7f55ccc0a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニゲラ* | 作成日時：2024年3月14日 15時
