我儘 (ページ21)

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目覚めると大きなベットの上にいた。
モノトーンに統一された見覚えのない部屋。

少し開いたドアの向こうから珈琲の香りがする。

もしや…と嫌な予感がしてドアを開けると
キッチンに立っていたのはラフな姿の吉沢さん。

吉沢「あ、起きました？おはようございます」

『おはようございます。ごめんなさい…私、』

吉沢「いや、謝るのは俺の方です。
あんま記憶ないんですけど…俺、バーで寝ちゃったんですよね？」

『住所わかんなかったから勝手に免許証見て、
…あと鍵も勝手に、』

吉沢「そっか、申し訳ない…
あ、もしかしてバーのお会計も？！」

『…はい』

吉沢「うっわ～俺最低だ…ごめんなさい。」

『いやいや、私も睡魔に負けて気づいたら…』

吉沢「夜中に目覚めて隣見たら笠松さん床で寝てたからベットに運んだんですけど、
勝手に人のベッドで寝かされるなんて、よく考えたら嫌でしたよね？すみません…」
　
　
『いやいや…久しぶりにぐっすり眠れました。お気遣いありがとうございました』
　
　
吉沢「ほんとだ、顔色良くなってる」
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
スウェットにパーカー姿でヘアセットもしてないラフな吉沢さんが微笑む。
危うくときめきそうになってしまった。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
吉沢「顔洗いますか？タオル二段目の引き出しにありますので」
　
『お借りします』
　
　
　
　
　
　
　
　
　
顔を洗いリビングへと戻ると「座って」と促され、
彼は目の前に珈琲を置いた。
　
　
　
　
　
『美味しい！』
　
吉沢「でしょ笑」
　
　
　
得意げに笑って、彼も珈琲を口につけた。
　
昨日までは殆ど会話も無かったただの同僚と優雅な朝を過ごしているなんて、よく考えれば可笑しな状況だ。
　
　
　
　
　

　
吉沢「俺早めに仕事行くけど、笠松さんは一旦家帰りますか？」

　
　
　
　

確かに服も昨日のままだしシャワーも浴びたい。

時計は8時を指していて、いつもなら起きて準備を始める時間だった。

『9時に間に合うかな…』

吉沢「笠松さんの分、俺がやっとくんで
ゆっくり出社していただいて大丈夫ですよ」
　
　
『いや、急げば…』
　
　
吉沢「だから大丈夫だってば、笑
残業続きなんだから無理しないで下さい」
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
「折角淹れたんだから飲んでよ」と彼が目配せをした珈琲に口を付けた。