我儘 (ページ12)

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＿＿＿忘れていた、"菅田将暉" は彼の芸名だ。

　
　
　
　
カメラを見つめたり、優しく微笑んだり、
彼は慣れたように何テイクもポーズを取る。
　
　
綺麗な女性モデルの髪にキスをする姿には
あの頃の面影など一切残っていなかった。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
何分経ったのだろうか、
隣にいた吉沢さんは再び撮影を終えた山崎さんと談笑していた。
　
　
　
　
　
　
　
　
菅田「久々やな」
　
　
　
　
変わらない関西弁と変わったビジュアル。
『久しぶり』なんて平然と返すけど緊張で心臓ははち切れそうだ。
　
　
　
　
　
　
　
菅田「こんなとこで会うなんて」
　
　
『…その言葉そっくりそのまま返すわ』
　
菅田「なんの仕事してるん？」
　
『広告関係で、』
　
菅田「へぇ～ならまた会うかもな」
　
　
　
　
　
「車回してます」側にいたマネージャーらしき人がそれだけを告げて去って行く。
　
　
　
　
　
『忙しいん？』
　
菅田「うーん、まぁな、笑」
　
　
『…すっかり芸能人や』
　
　
　
「なんやそれ」と笑う彼は
私が知ってる彼とはまるで違う人物だ。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
『…菅田将暉』
　
菅田「ん？なに？」
　
『あ…いや、なんか…知らん人みたいやわ』
　
　
菅田「まぁあれから10年以上経ってるからな」
　
　
　
　
　
　
私の知らない空白の10年に、彼は一体何をして、どんな景色をみてきたのだろう。
　
　
　
そんなこと今更聞けるはずもなく
　
「ほなまたな」と去る彼に
『またね』と手を振りかえす。
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
また会える保証なんてどこにも無いのに。