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『移動!?』
 
 
 
 
 
 
 
広告代理店の大阪支社で働いていた私が
突然、東京本社の営業部へと移動を言い渡されたのはついこないだ。

 
 
入社4年、努力が実り業績が認められたのは
有り難いし誇らしい。
 
産まれてからずっと住み続けていた大阪を離れるのは少し寂しいが、ここに居続ける理由も無かった。



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『お請けします』
 
 
 
 
何の躊躇なく二つ返事で引き受けた私を見て、
「期待してるよ」と丸い顔をさらに丸くして笑う部長に頭を下げて部屋を出る。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『移動やって』
 
 
 
隣に座る彼の視線を感じ、そう伝える。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
中川「うわ、やっぱそうかぁ」
 
 
 
と言って頭を抱えるのは後輩の中川大志。
席が隣だったのもあって、色々と教えているうちに随分と慕ってくれていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
中川「Aさんがいない会社なんて考えられないですよ」
 
 
 
容姿端麗で他部署にもファンがいる彼は、
教える事も殆どない程に仕事が出来るくせに
何故私なんかにそんなことを言ってくれるのかはついに最後まで謎のままだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『ありがとう。私も中川君と離れるのは惜しいけど…お互い頑張ろう!』
 
 
 
 
 
ね?、と俯く彼の顔を覗き込むと
 
彼は頬を紅くして「ズルいです」と呟いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『いやいや、中川君は成績トップクラスなんやから、すぐ私なんて抜かしちゃうと思うけど…』
 
 
 
中川「そうじゃなくて、!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
いきなり席を立って大きな声で言うもんだから、
周りの人の視線が一気に中川君へと集まる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
中川「…引き継ぎします」
 
 
 
 
周りの視線に気づいた彼は、
再び椅子に腰掛け渋々とパソコンと向き合い始めた。

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作者名:sun. | 作成日時:2021年4月19日 17時

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