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#3 ページ4










その日から私達は、3年間ずっと同じクラスの隣の席でした。
多分、担任が変わらなかったので先生がそうしてたんだと思います。

たくさんの話をしました。
たくさんの事を知りました。今まで知らなかったことも。



彼は三角形のものが好きなこと。
運動が得意なこと。
祖父の影響でお芝居が好きなこと。
勉強は少し苦手なこと。

いつも持ってる三角定規は祖父の遺品であること。
出来のいい弟がいること。
両親は弟をとても可愛がっていること。
……弟に、両親は彼と関わるなと言い聞かせていること。



全部聞きました。
嫌なことも、悲しいことも。
私は、悔しかった。
悲しくて、苦しくて。
そんな資格がないことを分かっていても、涙が止まらなかったんです。


もう体の大きさは全然違って
声も低くて
長かった前髪を切って。
そして彼は笑うようになった。
その笑顔で、言うんです。







『Aがいるから、オレもう悲しくないよ』







彼と話して、触れ合って。
私の世界は変わった。
いつも見ていた景色が、全然違うものに見えた。

彼の目に映る世界は綺麗なものばかりで。
普通なら気にもとめない事でも、彼が見つけて、教えてくれると別のものになるんです。

そんな彼を蔑ろにする両親が許せなかった。
変わった彼を見て手のひらを返したクラスメイト達も大嫌いだった。







2学期の最後。修学旅行。
まだ私達の知らない世界に行って、そこで彼の見る世界を見るのが本当に楽しみでした。
彼も楽しそうに話していたから、最高の思い出を作ってあげようと思ったんです。





なのに。








『オレ、行けない。
修学旅行、行けないんだ〜』






彼は、笑ってました。
オレの代わりに見てきてね、って。
彼の両親が、修学旅行費を出さなかった事を先生から聞きました。
それほどに、どうして彼が愛されないのか私には理解出来なかった。







――――そして、初めて私は悪い事をしました。






『A……?なん、で』

『……ない』

『え?』





『一緒じゃなきゃ、意味無い!!
……貴方とじゃなきゃ、何の価値もない!

貴方と一緒に、同じ景色を見たいから』






新幹線に乗りませんでした。
誰にも告げず、彼のよくいる公園に走りました。

初めて、人の迷惑を考えずに行動しました。
彼に抱き締められました。
こんな気持ちは初めてでした。
今でも、その事は後悔してません。





彼と、初めてキスをしました。

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設定タグ:A3! , 斑鳩三角 , 月岡紬   
作品ジャンル:恋愛
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♭れもん - な、なける…すみー… (2020年1月5日 3時) (レス) id: 3207116b3a (このIDを非表示/違反報告)
ちょこしゅー。(プロフ) - 急にこんなもの投稿するなよォ……好きだ……… (2019年12月16日 0時) (レス) id: 4110ba5437 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2019年12月15日 17時

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