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初めて見た彼の顔は凄く戸惑っていて、
長めの前髪の隙間から見えるオレンジ色の目が、見開かれてて。
ハッとしたと思ったら、言うんです、彼。
『おれと一緒にいると、皆からきらわれちゃうから』
まだ声が高くて、そのあまりのか細さに胸が痛かった。
彼の周りが彼を独りにするだけ。なのに、それを彼は自分のせいだと思ってる。
それがね、すごく悲しかったんです、私。
突っ伏したままなのは、誰かに話しかけられないようにするため。
長い前髪は、自分の気配を消すため。
ひと月も隣にいたのに、私……知らなかった。
彼の声も、顔も。
自分がとても恥ずかしい人間だと思った。
百聞は一見にしかず、っていうでしょう?
自分よりも人の事を考える彼が、悪い人な訳ないんです。
『皆、じゃなくていいです。
私は、貴方と話したい。
貴方と話すだけで私を嫌うなら、そんな人いらない。
だから、教えてください。
貴方のこと』
手が震えました。
誰かに、こんなに自分の気持ちを伝えたいと思ったのは初めてだったんです。
知りたかった。
知らなければいけないと思った。
何も知らない私が、彼を拒む理由ほど
くだらない事なんてないと思った。
『……いい、の?』
『おれ、きみと話していいの?』
『おれ、……おれ、ここに、君のとなりに、いていいの?』
――――そばにいたいと思った。
私より少し大きな体が、こんなにも小さく見えるから。
彼の泣いた顔を初めて見た瞬間、本当に、心からそう思ったんです。
『ここにいて』
震えが止まるまで、その涙が止まるまで。
……いや、これからずっと。いつか離れるまで。
どんな時だって、そばにいようと思いました。
そばに、いたかった。
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♭れもん - な、なける…すみー… (2020年1月5日 3時) (レス) id: 3207116b3a (このIDを非表示/違反報告)
ちょこしゅー。(プロフ) - 急にこんなもの投稿するなよォ……好きだ……… (2019年12月16日 0時) (レス) id: 4110ba5437 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2019年12月15日 17時