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第39話 ページ39

――――「そして俺はそのAを超えて、Aというヒロインに相応しいヒーローになる」



真っすぐな紫色の瞳が、胸を締め付ける。
焼けるような肺の熱さとも、火照った頬とも全然違う、熱。
近づこうとすれば遠ざかった。触れようとすれば見えなくなった。
想いが深まれば深まるほど、複雑に絡まっていく思考に支配されて見えずにいた。
本当は、あの頃の私でもわかるくらいに単純なことだ。




「天馬」
「!…A」



今までずっと秘密にしてた。
近づきたかった。貴方の理想に。他でもない、貴方の心に、意識に。
誰にもわからないように、でも実際そうできていたのは最初の2年くらいで。
――――隠しきれなかった、抑えきれなかった。

それくらい、貴方でいっぱいだった。



「チャンスは、1度だけ。もうそれ以上はしない。――いいな」
「…わかってる」


決意した強い光がまぶしくて、思い知る。
もうあの頃の私達じゃない。もう、あの頃には戻らない。
嘘もつかない。…どっちだって同じだから。
これから先、何があっても。何と言われても、何もかも失くしても。

後悔しない。
出会ったことも、好きになったことも。




「衣装、メイク急いで!」
「セット展開するよー」
「カメラ持ってきて」
「このシーンで今日の分終わりです」
「あ、予定変更します――――」






始まるのはラストシーン。
私達の、最初で最後のキスシーン。




「A。台本通りにはしないからな。ついて来いよ」
「…それは、こっちの台詞なんだけど」
「生意気だな」
「お互い様でしょ」



昨日までの私を脱ぎ捨てて、私は貴方の“ヒロイン”になる。
貴方の手の中で、貴方のキスで、貴方でさえ見たことのない貴方だけの。



「天馬、――手、握って」
「…は⁈」
「ほら、早く」
「――っわかった」



もう震えない。もう怖くない。
あんなに心配してたのが嘘みたい。

視線が合う。
呼吸を、鼓動を合わせる。
全ての意識を、貴方だけにあげる。




「撮影は長回しで1回だけだ。待っては無しだぞ」
「待ってなんて言わない。…大丈夫だよ、天馬」




長回し――――ワンシーン・ワンカット。




「隼人」「涼」




私の全部、天馬にあげる。

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春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます!タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください! (2018年8月31日 10時) (レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー!!!めちゃくちゃいいとこでー!!!待ってますー!!!!! (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます!嬉しいです…!頑張ります!! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます!更新できるように頑張りますね! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - とても引き込まれました!頑張ってください! (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2017年12月7日 17時

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