第28話 ページ28
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――――「少し話したい」
切り出したのは、Aの方だった。
撮影後の深夜2時。
現場のすぐ近くにある自販機スペース。
そこに置かれた古いベンチにふたりで座る。
季節は初冬。
少し冷える手を温めるためにあたたかいココアを2つ。
1つ渡せば、嬉しそうに笑う。
それでなんとなく、ほっとする。
今日の撮影は都会から離れているから、澄んだ空気に星がよく見えた。
最近、Aがよく寮に出入りしている事は聞いていた。どういうわけか俺のいない時ばかりだが。
人伝いに聞くAは、俺の知ってるAとは随分違う気がした。
それが少し寂しいとは言えない。
「ごめん」
「…え」
「色々聞いた、皆から」
唐突に投げられた言葉に戸惑う。
まさか謝罪の言葉なんて想像できなかった。
謝るのは、自分の方だと思っていたから。
「天馬が、色々考えてくれてたの、分かってた。
その…台本に書かれたメモのこととかも」
いや誰だよ台本覗いたやつ……なんて心の中で引っかかるものはあるが、どうやらうちのカンパニーはお人好しばかりらしい。
申し訳なさを感じながらも、その優しさを嬉しく思ってしまうのは仕方ないことだろう。
そして、紬さんの言葉を思い出す。
――あぁ、やっぱりあの人の言った通りだと。
自然に座ったふたりの距離は、台本を隣合って読んでいたあの頃と同じだった。
「…慣れてない、だけなの。いつもは男同士の距離だったから。まだ…自分がヒロイン役って実感が薄くて。
本当はこのままじゃ駄目って分かってる。
ちゃんと、できるようにするから」
一生懸命で、真っ直ぐな目を見るのが好きだ。
Aの、強い声が好きだ。
憧れだった。芯のある心が。
だから、いいんだ。
拒まれてなんて、無かった。
それだけ分かれば、もう他のことはいいんだ。
「天馬のことが、嫌なんてことは絶対ないから」
その言葉が聞けたなら、それでいいんだ。
「今更だな。
――――分かってる。だって“相棒”だろ」
いつもAの事を考えてた。
どうしたらいいか。
どうしたら追いつけるか。
でも――――考えるのをやめた。
「頼りにしてるよ、“相棒”」
見つけた答えを望んでいる奴は
この世界のどこにもいないから。
( ごめん、A )
俺にとっての相棒は、“椎名涼”であって
――――“松岡A”ではなかったんだ。
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春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます！タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください！ (2018年8月31日 10時) (
レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー！！！めちゃくちゃいいとこでー！！！待ってますー！！！！！ (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます！嬉しいです…！頑張ります！！ (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます！更新できるように頑張りますね！ (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
狂(プロフ) - とても引き込まれました！頑張ってください！ (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一華 顕音 | 作成日時：2017年12月7日 17時
