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第16話 ページ16











少し、駆け足になるのが自分でも分かる。


ざわつくスタッフ陣と聞こえてくる話し声。
それは殆どが、アイツのこと。
アイツだってこのスタジオに来るのが珍しい訳では無いはずだ。
それなのにこの騒ぎ様。
辛うじて拾えた単語は“めっちゃ女の子”だ。






「そりゃあ驚くよな……俺でもなんだから」






だってそれは、
まだ誰も見たことがないアイツの姿なんだろ。







「おい嘘だろ……
――――迷わなかったぞ……!」






目の前にある扉には、確かに井川が言っていた番号が書いてあった。
……重症かよ、俺。






「あ、皇さん」

「今日はよろしくお願いします」

「はいはい!皇天馬さん入りまーす!」





たくさんの機材。
たくさんのスタッフ。
見覚えのある共演者と






「……A、だ」





監督と、アイツ。


どうしてだろう。少し震える。
一歩踏み出すほど、向かって歩くほど、心臓が煩い。
……幸の言う通り、俺は案外ぽんこつなのかもしれない。





「天馬君、やっほ」

「今日からよろしくお願いします、監督」

「はいはい。じゃ、あとは若いふたりで」





…昔から思ってたけどあの人は一言多いんだよな。
余計な事を言ってくれる。
そんなふうに言われたら






「ひ、久しぶり」

「…おう」






――――どう話していいか、分からなくなるだろ。





あの頃の面影が無いわけじゃない。
大きくて力強い目も、高過ぎない声もそんなに変わらない。

けど、やっぱり別人だ。
5日前に見といて良かったかもしれない。





「背!……伸びたね」

「あ、あぁ。お前は…髪、が」

「あぁ、うん、最近は時代物が多かったから、伸ばしてたんだよね」






あの日一瞬でも見れていなかったら。
今日が本当に久しぶりの再会だったなら。






「その……この間言えてなかったが、」






……正直、100%直視出来なかった。






「女子の制服も、やっぱり似合うな」

「……へっ………!?」






合わなくなった目線の高さと
俺よりずっと華奢な肩幅。


多分もう上手く肩を組めないんだろうな、…なんて。





「よろしくな、相棒」

「こ、こちらこそ!……また、よろしく」






それが少し寂しい、なんて。

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春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます!タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください! (2018年8月31日 10時) (レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー!!!めちゃくちゃいいとこでー!!!待ってますー!!!!! (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます!嬉しいです…!頑張ります!! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます!更新できるように頑張りますね! (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - とても引き込まれました!頑張ってください! (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一華 顕音 | 作成日時:2017年12月7日 17時

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