【A3!】ワンシーン・ワンカット【皇天馬】

第11話 ページ11

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なんか、聞き覚えのある声だなと思ったのは俺だけじゃ無いはず。






「摂津か……？あの野郎懲りねぇな…」

「花学組が帰ってきたのかもしれませんね」






外から聞こえるその声は紛れもなく万里さんのもので。
完全にお説教スイッチの入った左京さんは眉間に皺を刻み込んで玄関に向かう。…あの人は本当に凄み方がえげつない。





「あれっ……万チャンと言い合ってるのって……女の子っすか？」

「えっうそ……修羅場……？」

「…私見に行ってくるね？」

「動機が不純なの丸わかりだけど？」





怖いもの見たさに監督も左京さんに続いて玄関へ。
残された俺達はあれやこれやと修羅場の原因を予測してみる。…まだ修羅場と決まったわけじゃないけどな？

そりゃあ万里さんレベルになれば女なんて引く手数多だろう。あんな顔の綺麗な人は芸能界でもそういない、と思ってる。言ったことないけど。
至さんも相当だけどな。

……あ、そういえば。
ドラマの撮影期間中は秋組の殺陣練習参加出来ないかな。
間違いなくアクションシーンはあるし、秋組のレベルならかなりいい練習になりそうだ。





「ん？ワンレン？今、ワンレンって聞こえなかったっすか！？」

「……テンプレヤンキー女版ってとこかな」

「結局万チャンって十座サンのこと大好きっすよね」

「今時小学生でもいないけどね。好きなやつほどちょっかいかける奴」




だんだんと近付いてくる声とズレていく会話。
……それ本人聞いたら相当怒ると思うぞ。俺は知らないからな？

扉の開く音と同時に鳴り響いた着信音。
それはどうやら客人のものらしい。
ていうか、修羅場の彼女連れ込んだのか？そんなことあるか？
いよいよ好奇心に負けた俺は玄関に向かう。







「監督？誰が来てるんだ？」






…いやまて。直球過ぎないか俺。
対処しきれない返しだったらどうするんだ俺。

蝶番が嫌な音をたて、半分ほど開いたその先。






――――見覚えのある、中性的な目。





「――――っ……てん、」






閉まった扉と整理のつかない頭。
――――誰だ、あれは。
誰かは分かる。わかる気がする。
でも、想定外だったんだ。






「天馬君！？か、顔――――真っ赤だよ！？」






そんな言葉に気づかないくらい
俺の時間は、その瞬間止まってた。







「A………？」







それくらい、
10年という月日はアイツを“女”に変えていた。

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