第31話 ページ31
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「A、遅くないか？」
「そうね…もうすぐ撮影再開だけど…」
時の流れが分かりづらいスタジオの中。
思い出したように見た時計は、撮影開始の2分前を指していた。
撮影を中断したのが28分前で、Aが水を取りに行ったのが25分前。
約23分、Aは帰ってこなかった。
それが、漠然と胸を騒がせた。
「俺、探しに――」
「すいません！遅れました！！」
「お！ギリギリセーフだね〜」
額に汗を滲ませて駆け込んできたAは、驚いたように時計を確認して、息を吐く。
投げた視線に気付いたのか、こちらを見て悪戯っぽく笑って見せた。
少し火照った頬を隠すように目を逸らして、もう一度目を合わせる。
それを見て可笑しそうに笑う。
それは、知らない誰かのような笑い方だった。
「おい、」
「やあ、天馬君。2年ぶりだね」
「ぇ、あ、はい。お久しぶりです。間宮さん」
遮るように、静かに響く低い声。
その人は、2年前に主演を務めたドラマで監督を務めた間宮さんだった。
親父やお袋とも仕事をしたことがあるらしく、仕事に関して手を抜かない完璧主義で有名だという。
実際、そのドラマは高視聴率を記録し、俺にとっても知名度を上げることの出来た代表作となった。
「このドラマの監督とは旧知の仲でね。皇君の演技を見学させてもらえることになったんだ」
「そうなんですか。じゃあ、撮影始まるので」
「ああ」
間宮さんは俺にとって恩師のような人であり、尊敬できる人だ。
実績もちゃんとある。
なのに、妙だ。
この人も、あの頃と違う。
空気が変わったような、違和感。
胸騒ぎは大きくなるばかり。
「A、大丈夫か？」
「ん？当たり前」
「それならいいけど…」
温い空気の束に、首を緩く締められるような感覚がする。
息がしずらいのは何故だ。
この胸騒ぎはなんだ。
何かが、違う。
30分前と、何かが。
「シーン35から行きまーす！」
「松岡さん、立ち位置はこっちで――――」
空気に亀裂が入ったような、嫌な音だった。
「A！！！！」
崩れ始めたセットから引き離すように腕を引く。
自分の手が震えているのが分かった。
崩れ落ちたセットに冷めきった空気の中、
「触んな！！！！！………ぁ」
「松岡さん！？」
弾かれた腕の痛みより、拒まれた痛みより、
Aの傷ついた顔が身を切るような痛みを感じさせた。
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春野さん(プロフ) - 完結おめでとうございます！タイトルからこんな風に繋がるとは思ってなくて、思わず涙が出ました。本当に素敵な作品だと思います。この作品に惹かれたのがきっかけで天馬最推しになった位(笑)次回作やアナザーストーリー、あれば期待しています、頑張ってください！ (2018年8月31日 10時) (
レス) id: 43b6e8fc40 (このIDを非表示/違反報告)
ゴム手袋(プロフ) - いいところで更新停止ー！！！めちゃくちゃいいとこでー！！！待ってますー！！！！！ (2018年8月7日 10時) (レス) id: 2405ca442d (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - 狂さん» コメントありがとうございます！嬉しいです…！頑張ります！！ (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
一華 顕音(プロフ) - Mareさん» コメントありがとうございます！更新できるように頑張りますね！ (2017年12月30日 16時) (レス) id: f13dd29270 (このIDを非表示/違反報告)
狂(プロフ) - とても引き込まれました！頑張ってください！ (2017年12月29日 11時) (レス) id: 4e15e8f7b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一華 顕音 | 作成日時：2017年12月7日 17時
