【刀剣】揚羽蝶の姫【乱舞】 (ページ33)

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優シサページ33

【薬研藤四郎】

＿＿＿＿『わたし、あなたにあったこと、ある』

「気のせいだろう、きっとな」

幾つもの言葉に感情を隠しても、
お前は上手に見つけてしまうから。

今にも吐き出してしまいそうな痛みが、
瞼の裏の面影が、
心を軋ませて、傷ませた。

ひたすらに、悩ませた。

「薬研、平気か？」

「長谷部……ああ。平気だ」

「俺にはそうは見えないが」

「………平気じゃないと、いけないだろうが」

あの娘は何処かおかしい。
幼い少女とは思えぬ瞳をしている。
静かに、何かを狙う様に光る。

何かを探し、何かを隠した視線が、
疑う様に周りを警戒している。

そんな目が、俺を捉えて綻ぶのは＿＿＿＿？

「やげん」

「なんだ？」

「…やげん」

「ん？」

「………違う」

「…え？」

【敵襲＿＿＿＿速やかに、臨戦態勢に＿＿＿＿！】

＿＿＿＿そう、今日と同じような、日。

『やげん………
＿＿＿＿＿＿＿＿薬研通吉光』

密やかに芽吹いたその業の花が、
彼女の中で狂い咲いた。

雪崩込む男の群れ。
血腥い暗闇の中。
咽び泣く、少女の悲鳴。
轟いた咆哮。

地獄の果て。
俺達が朽ちた＿＿＿＿業火の中で。

「主ッッッ！！」

「やげん……くに、なが……」

「おい！しっかりしろ！！主！！」

「A……A……ッッッ！！」

その小さな手を掴もうと
必死に伸ばした赤い手が、

( やら、なきゃ…… )

泣きそうなほど、美しかった。

「触るな人間ッッッ！！」

「な、なんだお前、やめ、やめろッ」

煩わしくて、伸びた髪を己で切った。
伸びた足で踏み出せば、すぐにその手を握れた。

＿＿＿＿本当はずっと、
＿＿＿＿自分から触れてみたかった。

「もう、泣かないように」

だから、
またこの手で、最期を共に＿＿＿＿

「薬研ッッッ！！」

俺は。

「忘れるんだ。全部。
お前は、A。清洲A。

俺に、誰かを愛する事を教えてくれてありがとう。
俺を、人にしてくれてありがとう。
どうか、俺を忘れて。

愛してたんだ＿＿＿＿A」

業火にも焼かれない美しい羽を広げて
揚羽蝶は舞う。

少女を慰めるように、その頬を撫でて。

「そうま」

己が刀身を、
責めるように止まって。

「」