【刀剣】揚羽蝶の姫【乱舞】 (ページ26)

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愚カシキページ26

【大和守安定】

引き金を引いたのは、
他でもない僕自身だった。

「清光＿＿＿＿ッッッ！！」

絡まる音が僕を責める。
漏れる悲鳴が僕を責める。
睨む紅い瞳が、僕を変えてしまう。

ほとばしるように
鮮烈に駆け巡った激情を
僕は気付かぬふりをしていた。

「ぐっ＿＿＿＿ぁ！！」

「清光ッッ！！お前ェ！！」

「おい！！なんの騒ぎだ！止めろ！！」

「A？！どうしたんだ！A！！」

怒り。
焼けるような痛み。
溢れ出る悔しさ。

本当は、よく似ている。
それは、僕と彼女だけじゃなくて。

僕と、お前も。

だって、ずっと一緒だったのに。

「何でこんなことしたんだよ清光！！お前は、そんな、そんな奴じゃ＿＿＿＿っ」

「お前こそ馬鹿にするなよ安定！！俺にだって譲れないものくらいあるって何で分からない！！？」

知ったつもりでいた。
お互いに。

だけど、
僕らはまだ全てを知ると言うには遠すぎた。
まだ僕は＿＿＿＿あの頃に止まったままだった。

もう、
何もかも違う。
あの頃の僕等は、ただの刀だった僕等はいない。

ここにいるのは、
1人の男と、男。

愚かなのは、僕の方だ。

「安定！清光！止めろ！！」

「兼さんっ！！危ない！！」

「2人共離れろ！！これ以上の問題は謹慎処分だぞ！」

「長谷部君は大和守君を抑えて！僕は加州君を抑える！！」

「加州の旦那も大和守の旦那も落ち着けッ！！」

「おいおいこんな驚きはいらないぜ……？」

＿＿＿＿嫉妬だったのだろう。

変わって欲しくない、なんてのは建前で。
僕はただ、彼女の隣にいるお前が羨ましかった。
楽しそうに笑う笑顔が、眩しかった。

惹かれるのに順番なんて多分なかった。
お前が彼女を愛おしく想うのと同じ頃に、僕もまた彼女を想っていた。

僕等は、
癖も仕草も、戦い方だって。
本当によく似ているのだから。

「A…何があったんです…？
どうして、泣いて＿＿＿＿」

泣かせたく、なかったのに。
だから、助けてあげたかったのに。

「＿＿＿＿宗三？」

彼女の目はいつも怯えてた。
なのに、凄く強い目をしてた。
それが僕には不思議だった。
そうして、惹かれていった。

狂うように、
捕えられるように＿＿＿＿

「何故……」

愚かしくも、
全てを犠牲にする事を厭わないほどに。