【刀剣】揚羽蝶の姫【乱舞】 (ページ21)

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解レページ21

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＿＿＿＿耳を、塞ぎたかった。

( なんで、……なんで……っ)

聞いたことないくらい甘くて。
そんな彼女は知らなくて。
だって、ずっと望んでた。

他の誰も、
知らない彼女を知れたら、って。

＿＿＿＿なのに。

『2人だけの、秘密』

その甘い声は知らない。
小さくなった音なんて、知らない。
掠れた響きも、俺は知らない…！

( なんで、俺じゃないの )

握り締めた手が痛い。
目の奥が熱い。
喉が焼けそう。
胸が、張り裂けそう。

澱んだ何かが、激情が。
今にも溢れてしまいそうなのに。

( 俺、こんなの、知らないよ…っ )

今すぐ逃げ出してしまいたいのに、
足が動かないんだ。

「＿＿＿＿清光くん？」

「…っ、」

聞き慣れた声にハッとする。
目が合った途端、彼はその目を大きくした。

空色の瞳に、
恐ろしい顔をした俺がいた。
醜い、自分の顔が見えた。

「ちが、ごめ…っ」

「！清光くん！！待って！！」

＿＿＿＿君が、俺に愛されたなら。

いつだって隣で。
どんな時も寄り添って。
その肌に触れて。
名前を呼びあって。

時々する悲しそうな顔なんて、させたりしない。

毎夜、叶わない夢を見て。
声にならない声で、呼んでみたりした。
思えばきっと、あの日から、ずっと。

＿＿＿＿『安定、その子が？』
＿＿＿＿『そうだよ。…何？』
＿＿＿＿『…いや、なんか』

( 綺麗だな、って )

「……清光？どうしたんです清光！」

「加州！！廊下を走るなといつも…….！！」

「加州の旦那？……おい！！」

こんな可愛くない俺、
見られたくないに決まってるでしょ。
それにさ、俺ね、君にはカッコイイ俺を見せたかったんだ。
どんな時もね。

光忠とか貞ちゃんみたいにきまってて
兼定みたいに強くてカッコよくて
三日月みたいに余裕があってさ。

俺、Aの為なら
変わるのも悪くないって思ったんだよ。

「……ぅっ……ぁ………ぅあ……っ」

乱がよく見ているどらまってね、
苦しくて人が泣くんだ。

誰かを斬ったわけでも、
仲間を折られた訳でもないのに。

ようやく、どうしてか分かった。

「＿＿＿＿好きだ、A…っ」

恋しくて、焦がれると人は
苦しくて切なくて、泣いてしまうらしい。