・ ページ6
.
高専に戻り、自販機のすぐ側にあるベンチに2人で座る。
買って貰ったジュースの缶をいじってると
五「俺はさ、」
ぽつりぽつり五条さんは話し始めた。
五「最近気づいたんだよ。別に恋愛対象女じゃねぇなって。」
『……はい、』
五「かといって男だったら誰でも良いのかって言われたらそれは違う。
Aだから好きだ。」
ちゃんと目を見つめ返すことが出来ない。
『……昔好きだった人もそう言ってました。』
言うつもりのなかった言葉が溢れ出していく。
『女とか男とか関係ないって。僕だから好きだって。
けど、結局振られました。男の僕なら都合が良いから付き合ってただけだって。』
五「……うん」
『周りにも散々言われるんです。気持ち悪いって。理解できないって。
甘くないんですよ、現実は。』
ぐっと拳を握る。
『友達にも…家族にも……!信じてた人達みんなに!
その気持ち分かりますか?』
『恵まれてきた五条さんに分かるんですか?』
言ってから気づく。
その言葉がどれだけ彼を傷つけるかを。
『っ、すみませ、』
咄嗟に謝ろうとした僕の言葉を遮って続けた。
五「正直、わかんねーよ。
Aがどんな環境にいて、どんなこと言われたのか想像はできるけど、
その時の気持ちを分かってやれる訳では無い。」
けど、 と僕の手を握る。
五「俺は今のAを分かりたい。Aの全部を。
過去もそりゃ、分かりたいけど……。過去なんてもんは変えらんねぇからな。
けど、これからなら変えられるだろ?」
得意げに笑う顔に、思わず目を逸らした。
すると
『んぶっ、』
両手で顔を挟み、無理やり目を合わせると
五「ちゃーんとAのこと好きなの分からせるからな。
覚悟しとけよ!」
それだけ言うと颯爽と帰ってしまった。
僕はというと
『……あっつ、』
熱くなった頬を、もう温い缶ジュースで冷やしながら
とぼとぼ帰った。
.
この作品をお読み頂き、そしてお気に入り登録ありがとうございます!
テーマにさせて頂いた曲はWurtSさんの「分かってないよ」
です!
309人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:リラ | 作成日時:2023年12月14日 10時