not a bad life ページ22
(男主side)
．
何度も取らずにいたその手を、
僕に伸ばし続けてくれた五条さん。
誰よりも強くて、簡単に呪霊もみんな祓っちゃう。
貴方はそんな"最強"になったけど、
心までそうじゃないのを僕は知っている。
「A！」
もう二度と失わないように、
『1人で抱え込まないで。』
今度は僕が守るんだ。
いつも大きいと思っていた背中が、今では小さく感じられる。
五「わりぃ、………」
『肩書きとか、最強とかそんなの僕は見てませんよ。
僕はただ、"五条さん自身"を知りたいんです。』
いつの日かやってくれたように、顔を包み込み目を合わせる。
海のように深い青がゆらゆらと揺れていた。
五「俺は、"最強"だよな？」
『まぁ、そうですね。』
五「俺、傑となら最強だと思ってた。あいつとなら何でも出来るって。
でもそうじゃなかった。護れなかった。」
五「術式はどんどん完成していって、けど俺自身はどんどんすり減っていく気がする。
俺っていう人間がどんどんかけ離れていってるのが分かって、怖いんだ。
でも俺は誰よりも強くないといけない。
"最強"を背負ってるから。
あいつと2人でそうだったはずなのにな。
あいつのことも、俺自身のことも もう分かんねぇ。」
子供が言い訳を零すように、ぽろぽろと本音が零れていく。
僕がもう少し強かったら、この人の代わりになれたのかな。
けど、もしもの世界なんてないんだから。
『分からないままで良いじゃないですか。』
『何が正解で何が間違いとか。
そんなの自分で後から決めるんです。
だったら、分からないままでいいんですよ。死ぬ時に「悪くなかった」って思えるんならそれが1番です。
1人で最強になったとしても、どれだけ姿形が変わっても
貴方が貴方自身を信じれなくなっても
五条さんは五条さんですよ。
強くて偉そうで、でも優しい
僕にとってはそんな人です。』
『泣いてますか？』
五「うるせぇ馬鹿、」
相変わらずの減らず口に笑ってしまった。
．
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作者名：リラ | 作成日時：2023年12月14日 10時
